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ガリーボーイのmovieJackのレビュー・感想・評価

ガリーボーイ(2018年製作の映画)
3.8
「ホテル・ムンバイ」終演10分後に偶然上映回があり
久し振りに同日に2作品を観賞したが
図らずも両方インドの都市ムンバイのスラム街が舞台なのは不思議な感覚

冒頭から主人公ムラド(ランヴィール・シン)の年齢不詳感(27・8才位のチンピラ風)
えっ大学生なのっ💦と状況把握・修正に少し時間を要したが(笑)

家庭でのシーンが増えだすと違和感は和らぐと共に
インド社会特有の今なお残るカースト制度の影響による格差社会
貧困と一夫多妻的習慣(若嫁を養うお金は有るんだね…)が描かれ

若者が抱える鬱屈した環境♪
ここではない何処かへという願望♪
現状打破を模索♪する葛藤♪
ライムを紡ぎ疾走♪する思考♪
自由の象徴♪ラップに傾倒♪
とラップ的要素も垣間見れ(恥)

また家族・恋愛・夢・就職・自立等々の問題も過去のインド映画よりストレートで解りやすく若者目線で現代風に描かれる

ムラドは大学行けてるなら中流家庭なのでは?
と感じる部分も少し有ったが
両親がかなり無理して学費を払っており
それを親が直接子供に愚痴る感や
アルバイトでの雇い主からの差別発言と
音楽流れるクラブの前に居るだけで邪魔者扱いされ蔑まれる感じ等々
観ているこちらの胃が痛くなる程の感覚を産まれながら刷り込まれていたのが伝わる
(コンテストでそのクラブを顔パスで入店するシーンは溜飲が下がる上手いシーンだが、雇い主であった娘が知らずに「ファンです…」位も期待したのだが…)

彼女役サフィナ(アーリアー・バット)は初登場シーンから
周囲との違和感を感じる程の美形で上品な容姿なのに
実は攻撃的でイケイケな性格は非常にキュートで
彼女の方がラップを体現しており
ムラドの我慢強くて大人しく
控え目な性格との対比も面白く
2人の音楽プレーヤー使いや掌ヒラヒラ等々の微笑ましい名シーンも多かった

インド映画的な
皆で歌って踊るというお約束展開も
彼のプロモーションビデオ撮影という「シング・ストリート」的設定で組み込み
街の雑多な風景とスラムの人々の熱気を伝えるのも監督の見事な手腕

ラップ特有の韻を踏む歌詞の構成は
日本語と外国語では全く違うと思っていたが
字幕監修に「いとうせいこう」
日本語ラップ第一人者を起用する間違いのない人選には
配給会社の意気込みも感じられ

後半へ徐々に盛り上がる高揚感と
存在感ある各キャラとの絡み具合も丁度良く
大きな挫折や事件・事故等のトラブルが無く少し平坦過ぎると感じるも
知名度が上がると酒やドラッグに溺れるという典型的なパターンではなく
ムラドの性格同様に控え目で脚色し過ぎない全体の雰囲気は
現実味があり好感が持てた

しかし
私の語学力と音楽知識の低さから
どれくらい作詞と作曲に素晴らしい才能やテクニックが駆使されているのかが判断できず
後半になるにつれ爆発的な盛り上がりを期待していただけに
歌詞(字幕)がストレートに心に響かず
恐らく現地では熱狂的支持だろうが
100%諸手を挙げ大絶賛とまではならなかったことは非常に残念
(サントラが耳に残るとかヘビロテする程にはならず…)

音楽の専門家(宇多丸師匠)目線で観ると全く違うのだろうと
師匠のレビューが非常に楽しみ
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