信頼という言葉の定義を体現する映画。「キューブリックに愛された男」なんて大げさだなと思ったらそのまんまの映画だった。むちゃくちゃ面白い。著名な人物にまつわる話だからかもしれないけど、それを差し引いても面白い。
映像はキューブリックの運転手兼助手のエミリオのインタビューのみで、当時の部分はほぼ写真とメモ紙や手紙だけなのにじぃっと見入っちゃう。シンプルに構成が上手い。
エミリオの優しく誠実で真面目な人柄が和やかな空気を生んでいて、彼が真摯に語る姿を見てるだけで楽しめる側面もあり、語る内容が興味深いという理由だけじゃなく、語り口って大事だなと実感した。
キューブリックのエミリオへの頼りっぷりが度を越し過ぎてて大変そうなんだけど愛らしくなる。
バットマンにおけるアルフレッドのような、運転手なんて最初だけで助手から執事、最後は親戚かと思うレベルにまで至る。公私ってかほぼ私的な存在で笑った。仕事人間の人生においては、友人よりも仕事で関わっていたからこそ近かったのかもしれない。
一旦離れたことで互いに存在の大きさを実感する展開も創作のように見事。定期的に見返したくなるほどに映像も演出も内容も良かった。
