友二朗

アルプススタンドのはしの方の友二朗のレビュー・感想・評価

4.6
「人生は送りバント」

第14回部室上映会にて。

あの頃に戻りたい。
珍しくこの感情に襲われた。

これより完璧な映画はいくらでもあるが、この75分で感じた気持ち。観た後の止まらない涙は他の映画では味わえなかった。

この作品の意義と結果を思うと、やはりこれ以上は絶対にないと確信できる。

自分は今まで14年間剣道とバドミントンをしてきたが大学から運動部を辞め、映画部と軽音サークルという文化の道に入った。

この状態で観るこの作品はきつすぎる。これ以上しんどい事はないと感じたあの合宿や、皆で枯れるほど泣いた引退試合、最後に部室のドアを皆で閉めるあの感覚。

何もかもがフラッシュバックしてきて、もう涙が止める事はできなかった。

これをスポーツの映像を使わず、アルプススタンドのはしの方だけの映像で引き出されるのだから言葉が出ない。

スポーツに関してだけでない、もう大人になっている高校時代に感じた事、考えていた事が全て凝縮されている。

「青春ってなんだろう?」って皆でぼーっと考える時間。こちらからすると「いやいやそれが青春なんだよ!」とどうにかして教えたくなる。全てが羨ましい。戻りたい。と散々もがいているうちにふと「あれ、自分も青春してたな」と気づく。その瞬間自分の中で何かの線が切れてしまった。

安田好きすぎる。と思ってデレデレ観てたら全員大好きになった。吹部の部長大好き。優等生のあの子、先生、皆もれなく素晴らしすぎる。共感しかない。これ高校生が作った?と思ってしまうほど。

下から煽りの画角に限られてて絵コンテと実際の撮影が面白そうだけどなかなかの勇気がいる。

制服がシンプルで可愛い。

「でもやっぱり
 お〜いお茶って譲れないじゃん?」
コメディ要素も最高でした。

爽やかで熱い。

絶対にまた観る。
読んでくれてありがとう。

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「今の、アウト?」
「アウトじゃない?皆戻ってるし」
「今度守り?」
「うーん」

「今のは、流石に普通にアウトだよね」

「ファールボール怖いよね」
「当たったら死ぬらしいよ」

「野球部ってだけで自動的に嫌い!」
ちょっと分かる。いやだいぶ分かる。

「高校3年生の夏ってこんななのかな
 もっとなんか、青春みたいな」

「それ腹から出てないですよ?
 それ完全に喉から出ちゃってるんで」

「友達、いないといけませんか?」

「向こうのさ、あの何変な守備の人」
「外野?」

「どうゆう意味?」
「だから、自分は活躍できなくても
 諦めて他の人の活躍見てろってこと」

「"しょうがない"って」

「だから俺は野球を辞めた
 矢野は続けてるけど
 俺の方が正しいよな?」
「うん。正しいと思う」

「進研ゼミじゃん」

「ここの自販機高いんだよ?
 黒豆茶以外200円もするんだよ」
こーゆーちょっとした展開のセンス。

「真ん中は真ん中でしんどいんだよ」

「割と好き」

「実は落としてたのかな?」
「私も同じ事思ってた」
「私達には取ったように見えて」
「実は落としてた」
「あ、なんだアウトか〜」
「迷宮入りだね」

「別世界の人だけど
 私達と同じ高校3年だもんね」
友二朗

友二朗