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アルプススタンドのはしの方のKUBOのレビュー・感想・評価

3.6
それがタッチアップというものだよ(^^)

『アルプススタンドのはしの方』オンライン試写会に参加しました。

おもしろい発想の映画だったなぁ。高校野球の地方予選の話を描いているのに、写るのは応援席のみ、それもアルプススタンドのはしの方。

登場人物も、野球部を辞めた男、全国大会に出られなかった演劇部員、テストの成績順位が常に1番だったのに2位に落ちた女、とそれなりに落ち込んだ奴ら。

普通映画の主人公はスポットライトの当たる側にいるが、本作の主人公たちは、普段スポットライトの当たらない側にいる。それは私たち観客と同じサイドだってところが秀逸。

メガホン持って必死に「声出せ〜!」と叫ぶ熱血教師を尻目に、あまり熱くなれない奴らのゆる〜い会話もおもしろいな、と思って見ていると、だんだんとそれぞれの抱える本音が見えてきて、「なんとなく」だった関係が変わり始める。

応援席だけの大胆な演出から、きっとこれは演劇が元かな(?)と思っていたら、やっぱりそうでした。大元は「東播磨高等学校」の演劇部、そこから奥村徹也がブラッシュアップし昨年「浅草九劇」で発表したものを、今回映画化したという運び。

それぞれ夢を諦めかけたキャストが使うそれぞれの「しょうがない」という言葉。いろんなことを諦めて「しょうがない」でいいのか?

送りバントで打席に立つ打者はかわいそうなのか?

野球ファンからしたら当たり前のわかりやすい例えだけれど、みんなが4番でホームランバッターになれるわけじゃない人生の中で、チームのためにたったひとつのバントを決めることの意味が、諦めかけていた負け犬たちにもう一度熱い思いを灯す。

演劇版からの続投も含めてキャストの皆さん、みんなフレッシュでよかったけど、私的には応援席でトランペット吹いてる ZARD みたいな美少女「黒木ひかり」さんに一目惚れ。いや、かわいい! 要注目です。

このままでもなかなかよかったが、私だったら、負け犬だった奴らが心から応援の声を上げたところで「カキーン!」って快音を入れてストップモーション、そのままエンドロールを流して、エンドロールの中で「惜敗のスコアボード」「涙する野球部員たち」の写真をモノクロで入れたりして終わりたかったな。あの終わり方でもおもしろかったけど、やや蛇足のような気もするし、この映画で一番カタルシスを感じさせてくれる、あのみんなで心から叫ぶシーンで終わらせたかった。

でも切り口はおもしろいし、すごいフレッシュな作品。予告編で気になった方は、ぜひ!
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