マンモスさちよ95歳

アルプススタンドのはしの方のマンモスさちよ95歳のレビュー・感想・評価

3.4
【映画製作観点から感想を書く】

期待していただけに残念だった
ストーリーが面白く役者も良くキャスティングもよかったけれど映画自体が残念だった。

以下に改善点をあげる。ぜひ読んで欲しい。

まず最初に、これは映画ではなくてラジオドラマになってしまっている。映画は映像と音があって成り立つのにもかかわらず、全て言葉にしていて映像の意味が全くない。「アウトかぁ」とか言わせる意味ある?
これは舞台が原作の作品の映画化によくある話だが本作はそれが一切考えられていなかった。
映画化にあたり舞台の大袈裟な演技や演出を削った結果、ただの会話劇になってしまい映像の必要性がなかった。(矢野の打ち方と飲みかけのおーいお茶(貰っても嬉しくない)以外)そうなるとつまらない。目を閉じても開けても中身の同じものになってしまって役者が可哀想だった。
例えば全部セリフにしないで2アウトの掲示板を写せばいいのにと強く思った。原作の舞台をリスペクトしてあえて映さなかったのかもしれないがそれによって捨てられる部分が大きすぎる。勿体ない。寧ろ舞台との違いは画なので、画で魅せる映画を作って欲しかった。

次に画のいい所がない。トランペット吹いてないの丸わかりだし、一方でオーボエは誰がちゃんと吹いてるかもわかる。
吹奏楽の演奏シーンと4人のシーンの光が違いすぎる。特に4人のシーンは無駄に画面を揺らせて暑さを表現しているのに曇りだし、風が強すぎて寒そうだった。到底同じ日とは思えなかった。また途中で西日が強くなっててこれがストーリーの後半だったら良かったのにと思ったし、実際の時間軸と撮影時間帯の違いがわかってしまう編集が残念だった。そしたらまた曇ってきて、あーと思った。終盤また日が強くなったけど。そこは合わせようよ。
画のいい所がないというのはそれだけでは無い。高校の制服が『書くがまま』という作品と瓜二つだった。ただ赤紐リボンをつけただけ。この手の映画はコアな映画ファンが見に来ることが多いと思うのでそこはしっかり確認しなきゃ。オススメするのは校章を入れること。低予算なのにオリジナリティが出る。次回作に活かして欲しい。
カメラは入り込めるカメラワークをするべきなのにひきのショットで手持ちブレが過ぎて、学生映画感がでている。あえてのカメラワークの演出が頑張って作ってますという世界だと再認識させ、引き込ませなくした。非常に残念。

また小道具と演出不足だとも感じた。例えばグローブの他に袋に何も入れてないのがおかしい。普通タオルとか入れるはず。折り目のない綺麗な袋に綺麗なグローブが丁寧に入っていてなんやこの用意された道具は!ってなった。
成長後のシーンは誰かの髪を切らせるか、時間を実際に変えて撮るべき。平井亜門くんなんて全くのそのままだし。髪型を変えるということはツインテールを解いたり、毛先をカールさせることでは無い。夜にそのまま撮ったんでしょ感が酷い。せめて場内で買ったコーラくらい小道具で持たせようよ。シーンの手抜きさにびっくりした。

しかしながら1番非難されるべきなのは音である。音はよく録れているが音編集がぶっちゃけ酷すぎる。遠くなっていくのに全く音が小さくならないシーンとなるシーンがある。画を捨てた会話劇なのに音ぐらいしっかりして欲しかった。
あと序盤の音と映像のミスマッチが気になるった。吹いている箇所と音は合わせた方がいいと思う。

作られた映像感とその欠陥に目がいってあまり頭に残らないし、ストーリーにしか推進力がない映像がつまらない作品だと思った。高評価はストーリーに対してであってこの映像化に対してでは無いことがよくわかった。この題材を持ってきてこの映像は悲しい。予算は少ないと思うが大事なところにもっとお金をかけよう。

『セトウツミ』という会話劇映画があるがこれは映像も意味がある。制作者が見たことあってもなくてももう一度見てみて欲しい。この作品はセトウツミの最下位互換作品。

再度申し上げるが、音しかないのにたまに見せる画が欠陥だらけで残念で音も編集が悪く期待を大きく下回った。