三畳

ホドロフスキーのサイコマジックの三畳のレビュー・感想・評価

4.5
思いのほか納得できるいい話だった!
サイコマジックのやっていることは、人間が現状抱えている目に見えない負の状態を、何か把握できる形に可視化させ、それが浄化されるところを見届けて体感することなのかなと思った。

映画で紹介されていたエピソードは特に
①疑似的に生まれ直す
②疑似的に自分を殺す 
③徹底的に(抑圧されていた感情を)感じきる
がポイントだと思った。

たしかに絵面はぶっとんでいてトンデモ医療と言われかねないが、むしろ人間の精神が病むメカニズムの方がそれほど複雑怪奇であることの表れなんだと思う。


神様は人が一生抱えて生きていくには到底重すぎる試練を下す。
恋人の自死や虐待など、深い傷を負った人が明日からの人生を前向きに生きられるように変化するのはまさにマジックだし感動した。


そして身体性(行動)が精神に作用する力がこんなにダイレクトに大きいとは驚き!だって体はハードで、ソフトは心なのに。
私はスピリチュアルも宗教も否定派ではないし、この事例はどれも嘘ではないと思っている。
でも自分だったらきっとここまで没入できない。

現に今毎月受けているカウンセリングでも、幼少期の自分に語りかけられたり過去の時点の他人と想像で対話したり、声に出してみましょう、息で吐き出してみましょう的なワーク?はあるんだけど、どうしても邪念がいっぱいでやりきれない。

それはひとえに私が自意識過剰人間だからだと思う。
自意識が強いというのは逆説的だけど客観視(人からどう見られているか気にしすぎる)が強いとも言える。

カウンセラーさんからも「三畳さんはご自身のことや過去のことをとっても論理的に整理しているから、その時の感情にアクセスしにくい。
周囲との関係についても正しく伝えようと客観的な見方から説明してくれるから、主観が見えてこない。」と言われている。

"無意識"に触れられるのは現在地の座標を見失いそうで怖い。
カウンセラーさんが救いをくれようと試みてくれても、自我が強いとそんなのまやかしでは?とブロックしてしまってる。(ということも把握できている。)


だからサイコマジックが効くかどうかは受ける人の感受性も大きくかかわってくるはずだ。
悪しき自分が死ぬ儀式を見て、死んだとちゃんと信じられるかとか。
ホドロフスキー監督のファンならもともと心を開ける素質のある人が多いのかな。
吃音が治った人すごい!


88歳のうつ女性は、他責思考で悲痛で痛々しく、私には他人事ではないように感じられた。
決して比べるものでもないけど他のエピソードのような決定的な事件があったわけじゃないのがリアルだし、それでいて10~20代のうつとは積み重ねてきた重みが違う。

自己満でマンション買ったけど満たされない、友達がずるい、移民なんて自分には関係ねえ!などと、世界が未成熟なまま・未解決のまま虚しさを感じ続けて生きている。案外そういう大人も結構いるのかもしれない。


個人的にひとつだけ賛同できないのは癌治療の実験ですね。
心の病を行動で治すことはできても、物理的な体の分野を気の持ちようや精神的アプローチで治すことはできないと思います(できたとしても結果論)。
あとカボチャのやつはあまりにも直接的だし過激で笑った。


(タイトルメモ)
母の愛をめぐる二人の兄弟の葛藤
自殺寸前まで父に虐待された男
誕生のマッサージ
夫婦の危機
家族に怒るパリのオーストラリア人
月経は問題?
結婚式の前日に婚約者が自殺したメキシコ人女性
吃音を止めたい47歳の男
深刻なうつ状態にいる88歳の女性
詩人で歌手の父の死後
ソーシャルサイコマジック 癌は治せるのか?
クロゼットから出る
メキシコ市の死者の更新


あと監督のその後の象徴的なシーンにはこのような人々の生の痛みが内包されていたんだなあと発見できるのも感動でした。

ってか50年もやってるのか。リアリティのダンス以降の作品がある今でこそ、監督が利他の人だとわかるけど、エルトポ頃の時点でよくこの人たちは監督を信じたね😳
三畳

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