MasaichiYaguchi

山中静夫氏の尊厳死のMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

山中静夫氏の尊厳死(2019年製作の映画)
3.5
南木佳士さんの同名小説を村橋明郎監督により中村梅雀さんと津田寛治さんのダブル主演で映画化した本作では死と向き合う2人の男が登場する。
1人は末期の肺ガンを患う山中静夫、そしてもう1人は呼吸器内科医師として患者を看取ってきた今井俊行、立場は違えど彼らは死と向き合っていく中で人生の意味を見出だしていく。
長い短いはあっても、人は皆いつかは死ぬ。
この作品に登場する山中や今井は特殊な人ではなく、我々と同じ何処にでもいる人々だ。
彼らには家庭があり、妻子の為は勿論のこと関わる人々の為に誠実に仕事を、社会生活を全うしてきた善良な人々だ。
だが、どんなに善良でも自分の意志に拘わらず死は忍び寄ってくる。
それは家族や人々の為に誠実に献身的に生きてきた男にとって不条理で納得のいかないものかもしれない。
本作は浅間山をはじめとした信州の美しい自然を背景に、夫々の立場で死と向き合う2人の男を通して、人が死ぬことや限られた人生の時間をどう過ごすのかを、その意味を中心に浮き彫りにしていく。
そして「安楽死」と「尊厳死」の意味合いの違いを、本作は改めて考えさせてくれた。