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少年の君の39のレビュー・感想・評価

少年の君(2019年製作の映画)
5.0
心を揺さぶられたというよりも、胸ぐらをつかまれて身体を揺らされた気分。どかんと一発くらわされるいい映画だった。

前作の「ソウルメイト/七月と安生」も素晴らしい青春物語だったが、デレク・ツァンの描く青春にはなかなか越えがたい苦痛があるな。今回のテーマはいじめなので、前作とは比較できない苦しみの大きさだけど共通していると思う。

主演のふたりがなんたって素晴らしい!チョウ・ドンユイは奔放な役が多いと思ったけれど今回は真逆。感情を抑え込むだけ抑え込んで、つぶらな目から一気にざーっと涙が流れるとこちらまで泣けてきてしまう。そしてシャオベイ役の彼もすごい若手俳優だなと思ったら、なんと2000年生まれのアイドル俳優だとは…!(チョウ・ドンユイと8歳差というのが一番の驚き)邦画で主演がアイドル俳優と知ってしまうと、やっぱりそういう目で見てしまう悪いところが私にはあるんだけど、知らない外国映画だとそういう偏見なしで見れるから新しい発見がいくつもあるな。等身大の体当たり演技が本当に良かった。良い意味で痛々しかった。怪しい若さを放つチェンの母親も、いじめっ子の美人も、ウォンビン似の刑事も周りのキャラクターの描かれ方も見事だった。(サブサブキャラのいじめっ子美人の右腕の子がめちゃくちゃいい雰囲気持ってた。画面に映る度に目を奪われたので将来化ける女優な気がする)

そして音楽がすごくいい。欲しいところで欲しい音楽をくれるかんじ。ベタな演出とも言われかねないけど、なんだか大衆映画のそれとは違うんだよな。なんなんだろう。デレク・ツァンの腕もあるだろうが、脚本もものすごく良い。印象に残る言葉は数あれど、登場人物がみんな大事なところで本音を言わない。言葉に頼るのではなく目で伝え合う、俳優の演技力とスタッフの技術力の息が見事に合っていたチームワークの賜物だと思う。

大雨の受験会場に集まった大量の傘、高速道路のような高層建築物に囲まれさながらジブリアニメのようなシャオベイの家、寂れたチェンのアパート、そしてチェンがいじめっ子から逃げるぐるぐる回る道(あれなんていうの?)、駅の長いエレベーター、息が詰まりそうな校舎…挙げたらきりがないほど、どれも脳裏に焼き付くロケーションの数々も素晴らしかった。そしてそれを美しく捉えた映像も素敵。

とにかくいろいろな要素が満点でもう1度スクリーンで見たいと思わせてくれる名作だった。

最初にチェンがいじめを通報して解雇になった先生、立派な大人だよ。
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