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少年の君のyksijokiのレビュー・感想・評価

少年の君(2019年製作の映画)
4.3
■3行サマリ
いじめや受験、貧困などの問題を抱える当事者が、不良少年と出会ってそれらの問題に向き合い、二人だけで乗り越えようとしていくお話。

■感想
久しぶりに涙が枯れるまで泣いたというか感情が爆発してもうとめどなく溢れてきてしまう涙にびっくりしたし、やり場のない感情と登場人物の二人だけの世界に対する共感が高まりすぎてめちゃ泣いてしまったのでもう個人的には傑作です。

構造はシンプルだし割と普遍的な言葉で語りかけてくるので興ざめしちゃう人もいるのかもしれないけど心理描写が丁寧だし、二人だけの、二人のための世界の描写が本当に素敵だったから感情移入しちゃう。そことの対比としての現実の存在に胸が苦しくなるし終盤は涙が止まらなかった。

孤独、そして守るものの存在を強く意識させられるし共助とか同調圧力とか、責任とか格差とか。中国と世界に広がっている問題の根本に対して目を向けているからこそのストーリーというかこのやるせなさはそうじゃないと作れないかなと思った。

また最高の表情映画に出会ってしまったという気持ちだし、表情を際立たせるカメラワークとカット割のセンスも素晴らしかった。特にベッドで横になった二人がホロッと涙を流すシーンが心に残っている。何かを訴える表情とは異なる当人たちにしかわからない感情表現というか、そこに言葉はいらないという感じがホントに素晴らしかった。泣けた。

守るものができた男は強いって言うけど、守るものができるっていうのは守られるものに支えられるということにも近いのかなと思ったり。守る側が守られる立場になっていることだってあるわけでそこだなと思った。

はちどりでも「殴られたら殴り返さないと」というセリフがあったような気がするが、この作品の意味合いはまた少し違った。人間にはいじめられるものと、いじめるものその2種類しかいないと極端に二分化した思考をシャオベイは突きつける。社会構造を指し示すようにその構造は物語の終盤まで一貫している。

ウォン・カーウァイの香港映画のような二人乗りバイクでの街を疾走するシーンもあり、所々で感じる香港ノワール感もとても好きなテイストだった。夜の街のライティングというかぼかしも素敵だった。

あとは表情だけで見せるシーンがたまらなくよかった。アクリル越しに映る相手の表情とかもう涙なしでは観られなかった。
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