空海花

少年の君の空海花のレビュー・感想・評価

少年の君(2019年製作の映画)
4.5
本国では諸般の事情により、殆ど宣伝が行われないまま公開されたが、
250億近い興行成績を叩き出す大ヒット。
香港アカデミー賞ともいわれる電影金像奨では、作品賞・監督賞・主演女優賞を含む8冠に輝いた。
アカデミー賞でも国際長編映画賞にノミネートされている。
監督は香港の名優エリック・ツァンの息子、デレク・ツァン。
原作は玖月晞のオンライン小説『少年的你,如此美麗』。
中国・香港合作。

いじめ、受験戦争、ストリートチルドレンなどの社会問題を痛切に描きながら
そこにある2人のピュアな魂が至高の作品。
受験戦争は共産主義の中国でも、資本主義的な競争社会と全く変わらない。
むしろ貧しくても能力や努力があれば、チャンスは均等だという(いいたい)背景が、更に拍車をかけているのか。
ここが日本だと言われても然程違和感はない。垂れ幕くらいかな。
私の時は、センター試験の会場がやたら遠くて行くだけで疲れたので(笑)本作みたいに学校でバスを出してほしかったな😅
いじめや、ストリートチルドレンの社会問題も日本や世界のあちこちで抱えている問題である。

いじめの場面は辛いというか、腹立たしくて仕方がなかった。
ストレスで子供の精神が病むのはわかるが、自分や周りを攻撃するかしないかでは明確に違う。それは分かるまで繰り返し言わなければならない。
この状況では親が子供を守れない。自分で身を守るしかないのか。
映画ではシャオベイや刑事の存在があるけれど…
あることから、チェン・ニェンは高校生らしい選択をする。
離れた背中からの安心感。
そして2人は浅薄で純粋な選択をする。
青い激情が切なく眩しい。

チョウ・ドンユイの演技が素晴らしい。
無言であってもその表情に、彼女の涙が落ちる度に心を持っていかれてしまう。
20代後半なのに、高校生どころか中学生にも見えることもすごいが、
彼女の流す涙に未成年さを感じてしまうのだ。
イー・ヤンチェンシーの表情もとても良くて、あの2人の無言のシーンを思い出しては今でも涙が出そうになる。
彼はアイドルらしいが、中国の名門・中央戯劇学院にペーパーテストと実技いずれも主席で合格したという優秀な方なのだそうで、2人とも凄い才能なのだなと思った。

実は正直、ストーリーには昔の少女漫画のようなドラマ性を感じて
これはさすがにないだろう、とか
クサイ話の筋には引いたりもしたのだが
脚本が見事で、シーン毎の演出に説き伏せられて
更に2人の繊細で強い演技に持っていかれてしまった。
骨太な映画作りの感覚が軸にある。
気になるところは実は結構あるのだけれど、どうでも良くなってしまったみたい。

ラストシーンのシャオベイの姿に思わず笑い声がもれた観客がいた。
わかる、わかるよ…


いじめ問題の啓発的映像
ただ法律の改正は草の根レベルでは如何ともし難いので重要なこと。
それ自体は世界にアピールして良い事柄。
中国政府のそれにも見えるが、これで上映できたのだとしたら良かったと思う。

原題もいいが英題もめちゃくちゃいい。
タイトル『少年の君』に感じたことはネタバレコメント欄へ(⚠️ネタバレです)


2021レビュー#152
2021鑑賞No.337/劇場鑑賞#54


最終週にどうしても観たくなって
1本だけ行ってしまいましたw
空海花

空海花