tokiwa3256

少年の君のtokiwa3256のレビュー・感想・評価

少年の君(2019年製作の映画)
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映画館ではなくwowowで録画して2回鑑賞。このため例の如くスコアはなし。
(前作の『七月と安生』とデレク・ツァン監督が敬愛する岩井俊二監督の超問題作『リリィ・シュシュのすべて』も鑑賞済み)

他の方のレビューもひと通り読ませて頂き(どれも素晴らしいレビューばかり!)
感想については皆さんと同じなので割愛。(というか、うまく感想を書けないので..)
いつものように別視点で。

多くのレビュアーが書かれているように、オープニングとエンディングに挿入される
「いじめ撲滅啓発テロップ」は、導入しなければ中国共産党の上映許可が下りなかったのは間違いないよね。恐らくデレク・ツァン監督の意図ではない。これはシンプルに『愛の映画』だと思うのだが。

あと、誰も指摘されていなかったけれど
「高考」が始まる朝での傘の集団シーンは2014年の香港反政府デモである「雨傘運動」を明らかに意識していたと思うのは俺だけかな?
もしも自分が中共の上層部の人間であればこのシーンは絶対検閲かけていたと思う。これ、よくそのままスルーされたよなぁ...そもそも、話の筋が異なるので結びつかなかったのかもしれないが。デレク・ツァン監督は香港出身。仮にこのシーンのことを質問したとしても本当の事は語らないとは思うけど。

それから何人かのレビューで
「wasとused to beのくだりは香港の事」
と書かれていたが、裏のテーマとしては確かにその通りかも。この映画で台湾や香港の人たちが受ける印象は大陸の人間や我々のそれとは全く違うのかもしれない。

低い位置と高い位置の構図で撮影するカメラワークでそれぞれの『格差』を表現するといったことはよく使われる手法であるが、この映画もそれをかなり意識している。中国社会の専売特許である監視カメラをあえて多用しているところとかも含めてこの監督は中国当局の検閲に抗ってギリギリを攻めている感じが凄いなぁ。。

最後の方でそれぞれの護送車が高速道路で別々に分かれるショットは「どこかで似たようなシーンがあったな?」と思ったら、濱口竜介監督の『親密さ』のラストシーンにとてもよく似ていた。どちらも非常に美しく心を揺さぶられる映画的に最高のショットだと思う。


とにかく心の片隅に残る作品。
出来ることなら全くの先入観なしで劇場で鑑賞したかった。それが本当に残念無念。
監督の次作にも大いに期待したいのだが、
中国当局が果たして作らせるかねぇ??
tokiwa3256

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