Morohashi

少年の君のMorohashiのレビュー・感想・評価

少年の君(2019年製作の映画)
5.0
やっと見れた!という感想。

この映画、とにかくいろいろとすごい。
冒頭の数分で「あれ? なんかこの映画、スゴそうだぞ…」と思わせるカメラワークや音声や演出。
俳優陣の演技力の高さ。それらを引き立てる色彩と音楽。
これらがすべてあいまって、強烈に映画に引き込まれていく。

一方で、悲しいことにこれを「容疑者Xの献身」や「白夜行」のパクリじゃね?という声もあるとのこと。
個人的にはある程度、似ている要素はあるとは思うが、全然アイデアが違うんじゃないか?と思う。
このレベルの似ているものをパクリと呼んでいたら、2時間ドラマがみんなシャーロック・ホームズのパクリになってしまう。


◯いじめと受験戦争
この映画の大きな柱をなすものの1つがいじめである。
日本では、ここまでいじめを真正面から描いた作品は少ないと思うので、中国でこれができたのは画期的なことだと思う。
昔「ライフ」っていう、北乃きい主演のドラマがあったけれど、いじめの程度としては「少年の君」のほうがかなり濃い。
でもこれでもかなりセーブして演出しているんじゃないかと思う。つまり実際のいじめはもっとひどいはず。

いじめって、ほっといても自然と発生するカビみたいなもので、厄介なことに滅菌処理をしていなくなるカビとは違って、いじめを防ぐ手段は本質的には存在しない。
しかも、この映画の中のように、受験勉強をする中で、極度のストレスがたまっていると、他人を馬鹿にすることで息抜きのようにいじめてストレスを発散しているように見える。
しょうもないことで、自分よりも下の存在を作って満足することの下劣さ。
まわりもまた、ターゲットになりたくないから見て見ぬふりをする。

この状況で本人に「戦え」っていうのは無理があるんじゃないかと思う。
学校として大切なのは、いじめはどの学校にも存在するという前提で動くこと。
未然に防ぐことも大切だけれど、いじめが起こった後の処理のほうがよっぽど大切。
「停学させるけれど、受験はさせる」っていうぬるい対応じゃ、結局他に示しがつかなくなってしまう。

また、警察や法律としての正義はあるだろうけれど、それを貫くことが果たしてみんなハッピーになれるのかは疑問に思えた本作だった。


◯2人の関係
勉強ができる優等生の少女と、落ちこぼれの不良少年。
このボーイミーツガールの関係だけでも、普通は出会わない世界の2人が出会ってしまったってだけでドキドキする。

この2人はとにかく美しい。
あらゆるものがピュアかつ純粋で、飾り気がない。
感情はむき出し、言葉も取り繕わず、相手の存在を構わず泣きじゃくる。
2人は光と闇の関係でいて、それでいてまったくの別物でもあり、同じでもある。
この2人の感情が純愛とか、恋愛とか推測したり、または言及するのは気が進まない。
もう、出会うべくして出会った存在であり、それ以上でもそれ以下でもない。
Morohashi

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