KANA

少年の君のKANAのレビュー・感想・評価

少年の君(2019年製作の映画)
3.9

『ソウルメイト/七月と安生』がすごくよかったので、同じデレク・ツァン監督×チョウ・ドンユイ コンビの本作にも興味が湧いて。

過酷な受験戦争、いじめ、貧困問題を軸に、優等生のチェン・ニェンとストリートで生きる不良少年シャオベイが孤独を共有しながら愛を育んでいく、というプロット。

観終わった後、かなり疲れた…

中国の受験戦争が過酷なのはニュースで見聞きしていたものの、想像を遥かに超えた世界だった。
高校での指導の様子を見てると新興宗教、或いは軍隊みたい。
「受験に落ちた者は人生終わり」とかそこら中に書かれてたり。

そこに陰湿ないじめが絡むからストレスフルこの上ない。
胸が締め付けられる描写が何度もある。

共産主義とは名ばかりの実質超資本主義化してる中国の環境なのか、
菩薩となり悪魔となり絶え間なく変化する人間の普遍的なサガなのか。
とにかくこのいじめは決して誇張ではないんだろう、残念ながら。

世の中の不条理をもはや割り切りつつ、感情と理性の狭間で葛藤する若い2人を見てると何ともいたたまれない気持ちになった。

チェン・ニェンを演じるチョウ・ドンユイ、『ソウルメイト〜』のロックなキャラと180度違ってビックリ!
主人公だからって非の打ち所がない美人でなく、幸薄そうな顔立ちの彼女をキャスティングしたのは大正解だと思う。
いかにもいじめのターゲットになりそうでリアリティがあるから。
演技自体も抜群に巧い。

イー・ヤンチェンシーも初映画主演とは思えない繊細な演技。
チンピラだからかマンバンにしてることが多かったけど、部屋でいる時の下ろしたヘアスタイルが素敵だったなぁ…ギャップかな?

でもその髪も…
揃って坊主頭のツーショット、グッとくる。

後半は思いもしない展開になり、エンタメとしてサスペンスの面白さも。

終盤の面会シーンの2人の無言の表情がほの温かくて嬉しくなった。
とはいえヒリヒリとしたビターな感触は消えないまま…
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