このレビューはネタバレを含みます
これまでの出逢いと別れを思い、心を寄せながら観ていた。私の心の軌跡でもあるこの作品。全てが愛おしくなった。
仕事としてそういう場面に多く立ちあってきた。亡くなられた後のお顔はいつも穏やかで神々しい。さっきまでこの世を生き続けていた方だから。家族にとって関わった人にとってはただただ美しく、尊く愛しいのだ。心を込めて支度を整える。思い出の深いお召し物を着せて紅を引く。
この映画は最期のお顔をきちんとファインダーにおさめてみせてくれた。以前はタブーとされていたこと。でも終活が世の中に浸透してきて、個々が自分の逝く道を少しずつ考えてはじめている。
印象的だったのは、自由に暮らしていた夫婦。認知症の奥さんはキラキラよく笑っていた。福祉の手が入ってベッドに寝るようになり、訪問入浴で2年ぶりにお風呂に入った。
しかし、すっかり精気を失ってしまう。果たして介入が正しかったのか?と自問自答させられる。
盲目の娘のために横になりながらうどんをすする末期がんの父。涙が止まらなかった。
最期の時をどこで誰とどんな風に過ごしたいか。
病院でもいい。施設でもいい。誰かの優しい声を聴きながら。