グラノーラ夜盗虫

ザ・プロムのグラノーラ夜盗虫のレビュー・感想・評価

ザ・プロム(2020年製作の映画)
3.8
親と姉妹(刺激の強い作品が苦手)と観る映画を30分以上探した結果、大晦日に観るにはめでたそうで良いかと思い本作に。
結果としては想定通りの信頼と安心のメリル・ストリープ作品で、最初から最後までテンポ良いストーリー展開に楽しく観ることができました。こんなに歌って踊れる"現役"な70代他にいますかね・・・?

何より良かったのがキャストの演技。メリル・ストリープやジェームズ・コーデンの安定感に加え、トレント・オリヴァーを演じたアンドリュー・ラネルズ(ブロードウェイ中心に活躍している模様)の突き抜けた演技が素晴らしかった。

NYのリベラルを極めて自己陶酔的かつ上から目線であるように描き、一方でインディアナ州のの保守派の時代錯誤さを過大に強調することによって、それぞれを痛烈に皮肉っていた。そして、その対立に揉まれる個人の葛藤を描くことによって、現代のアメリカのリベラル/保守、都市部/地方の大きな断絶を描きつつ、しばしばイデオロギーの戦いに利用される個人の構図を描いていた。イデオロギー闘争の前にその個人の思いに寄り添うこと、その個人を大切に思うことが重要であるということ(=いわゆる”汝の隣人を愛せよ”)が全体として伝えたいメッセージだったのかなと感じた。

また、エマが自身の心情を吐露する方法として選択したメディアが有名なトークショーではなくYoutubeであるあたり、Netflixが若者にとってはマスメディアがオワコン(というのは言い過ぎだけど)であることを揶揄しているようで面白かった。

2020年は映画館に数度しか行くことができず、自分としては作品を十分に楽しむことができなかったことが何より残念でした。Netflixでの鑑賞も楽しいですが、やはり映画は映画館でじっくりと堪能したいです。早くシネフィルたちと映画館であの素敵なひとときが共有できる日が来て欲しいと願ってやみません。