噛む力がまるでない

オフィーリア 奪われた王国の噛む力がまるでないのネタバレレビュー・内容・結末

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このレビューはネタバレを含みます

 リサ・クレインの原作小説を映像化した2018年の作品である。

 シェイクスピアについてはまったく明るくないので、『ハムレット』のオフィーリアがもし生きていたら……というこの再解釈の面白み自体はよくわからないが、女性映画としては比較的よくできているほうだと思った。女性が主体的になってナラティヴを語るべきだということをわかりやすく伝えようとしてくれているし、『スター・ウォーズ』でメインを張ったデイジー・リドリーの主演でやるというのもコンセプトとして正しいと思う。

 政治陰謀劇に巻き込まれて女性の主体性が置き去りにされる内容は『最後の決闘裁判』と似ており、すっきりしないあっちのほうと比べると、こっちはオフィーリア(デイジー・リドリー)をあまり途方に暮れない元気な女性にすることでずいぶんときちんと終わる。もとの戯曲はハムレットが狂人のふりをするのが物語のポイントになっていると思うのだが、この作品のハムレット(ジョージ・マッケイ)は常人として描かれており、狂人を装うような感じもない。しかしながら、オフィーリアにとっては復讐に取り憑かれたハムレットの姿は狂人のようなものだと解釈することが可能で、そんな恋人とはすっきり別れましょうみたいなクールなところは現代的な気がする。
 あと、この映画はジョン・エヴァレット・ミレーの『オフィーリア』を再現しており、単にそれだけではなく物語を書き換えるシーンとして機能させているのが面白い。企画の勝算は、原作の魅力と絵の再現をやることにあったんじゃないかと思う。