1944年公開の本作。今観ても十分面白い『シャーロック・ホームズ』シリーズである。
コナン・ドイルは優秀なフォーマットを見つけたものだ。もともとは医者で、副業として小説を書き始めたそうだが、絶妙なコンビを発見してしまった。頭脳明晰で早口のホームズと医者でおっとりのワトソンの組合せが秀逸なのだ。
それにしても第二次世界大戦の渦中に、アメリカではこんな映画が作られていたのかと感心する。日本では「一億玉砕」の悲壮感が漂っているとき、アメリカには娯楽映画を作る余裕があった。日本がまなじりを釣り上げて精神論をぶっているとき、アメリカでは涼しい顔の推論の名手が事件を解決していた。これが国力の差というものであろう。