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ドール・メーカーのhorahukiのレビュー・感想・評価

ドール・メーカー(2017年製作の映画)
2.8
後出しじゃんけんってズルくね?

『チャイルド・プレイ』『フライトナイト』のトムホランド監督最新作。『チャイルド・プレイ』の人形ホラーイメージで観客を獲得するためにこんな邦題にしたんだろうけど、人形にはそんなに重きを置いていなくて、人間が怖い系のサイコホラーでした。

美女を誘拐&監禁して、無理矢理じゃんけんさせ、負けたら殺害。もちろん後出しじゃんけんなので、100%負けるという鬼畜仕様。そんな手口の連続殺人で捕まった主人公ピーターが精神病院から退院してくるところからスタートする本作は、案の定全く治ってなかったピーターが再び暴れ始めるというありふれた展開を見せます。

そこに、ピーターの事件に興味津々な記者を名乗る女性、ピーターはまだ危険だと疑ってる元刑事のオッサンが絡んでくることで、それぞれの思惑が入り組み始めるといった内容。

前半はかなり退屈。ただ、ピーター役のルークマクファーレンの表情の演技から狂人の説得力が滲み出ていて、さらにはどこか精神的な幼さをも感じさせるもんだから、表向きごく普通な生活を望んでいるように見える彼が「いつ爆発するのか」という期待に近いスリルと「爆発してほしくない」というスリルの板挟みな感情が続いていくのが見どころっちゃ見どころって感じですかね。

その2つのスリルを煽るように、故意なのか不注意なのかを判断しかねる危うさを散りばめ、元殺人鬼というイメージがその一挙手一投足を恐怖に変換してしまうという偏見の根深さをキャラクターと同化させた演出に落とし込んでいるのは面白ったし、その偏見を跳ね除け、絶対爆発するだろうな…と思いつつも女性との通常のロマンス展開も願ってしまうという微妙な境界線を行ったり来たりするのが続いていくのも良い感じ。面白くはないけどね。

「それ伏線だったんだ!」って気づく後半以降の転換点の瞬間火力は激熱なんだけど、一気に点火した後にはそれほど燃え上がることもなく、すぐに弱火になって立ち消えちゃった印象。最後まで見ると凝ってるオープニング映像が伏線でもあり、ミスリードでもあるって気づくんだけど、そういう見せ方は望んでなかったという気持ちが勝っちゃってモヤモヤ感。

無難な中に少しのサプライズを込めてあるのは良かったんだけど、トムホランド監督にはもっと凄いの作ってほしいな~。とは言いつつもあんまりこの監督の作品を見てないことに気づいたので、いつか制覇したい!
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