「劇場」
“最近思うんだ。みんな幸せになれれば良いって。”
凄い作品でした。胸がヒリヒリするよ。永田も、紗希ちゃんも、青山も野原も。確かにそこで生きていました。
この作品、山崎賢人と松岡茉優のために書かれた作品なのでは?と思うほど、お二方の役柄が合ってました。特に、山崎賢人さん。アニメや漫画が原作となっている作品の実写版のイメージが強すぎたけど、彼も本当にいい俳優だと思います。むしろこの路線の作品をバンバン観たい。
そして何より松岡茉優さんですよ…!可愛すぎじゃないか??出演作で1番のはまり役かもしれない…でも、『ひとよ』の松岡さんも大好きです。
生きていくことに必死で、自分のことを守るのに必死で、どうあっても人を傷つけてしまう。自分の愚かさも、惨めさも、誰より自分が一番分かっている。永田は本当にどうしようもなくクズ男だったけど、紗希ちゃんとは出会うべくして出会ったのかもしれない。
紗希ちゃんも、東京で暮らしていくには優しすぎたんだろうな。
終わり方も秀逸でした。あぁそうか、という。好きで、互いが互いにとっての酸素みたいな存在で、大きすぎる世界で生きていくために必要だった2人が、時間が経つにつれて1人で歩けるようになってしまう。そこにいるのはもうかつての永田でも、紗希ちゃんでも無い。最後、照明が消えるまで席に居続けた紗希ちゃんに永田が会いに来ないのもよかったです。
個人的には恋愛映画なのに、キスシーンが一回も出てこないのが好きでした。手を繋ぐ場面だって一回くらいしかないのに、どうしてこんなにも充実した映画になるんだろう。というかむしろ、そういうシーンが少ないことで、2人の距離の近さが際立っていた気もする。
又吉先生は良い作品を描きますよね本当…。火花然り今作然り。でもやっぱりどうあっても少しだけ又吉先生自身のかけらみたいなのがどの作品にもある気がする。それが好きです。