松岡茉優が演じる沙希ちゃんのような彼女がいたら、居心地がよすぎて身を滅ぼしてしまう。
主人公の劇作家・永田は、
自分には才能があると思い込んでいたが、
演出した舞台はことごとく酷評されてしまう。
プライドを守るため、
哲学めいた斜め上をいったうわ言を並べて冷静を装っていても、不安でいっぱいだった。
そんなとき、現れた沙希ちゃん。
些細なことで笑ってくれるし、
永田が劇作家として名が知れ渡ることを信じて、働かずとも何の嫌ごとも言わない。
何でも受け止めてくれる彼女にだけは、見捨てられたくなかった永田。
でも次第に分かってきたことがある。
才能がないことを。
自分が1番分かっていたから、彼女に悟られたくなかった。
彼女のことは好きだったのだろうけど、
バカにされたくない
自分が正しいと思いたい
他人の意見など聞きたくない
という気持ちが強くて、沙希ちゃんが永田以外のものに目移りするとイラだち、気持ちを考えようとも思わなかったのだろう。
そんな二人はすれ違っていく。
最終的に芝居に固執し続けた永田は、
劇場で沙希ちゃんとの思い出に一区切りをつける。
舞台の上でしか吐露できなかった本当の思いに、切ない気持ちになった。
観客も見届けるしかできないからやるせない。
一方で、ウソでも叶えられなかった誰かの夢を目の前に作り上げ、救ってくれる劇場は必要だと思えた。
映画を通して、
実力のなさを知られたくない気持ちはとても分かったが、そんなことより努力した方がまだ気が紛れるだろう。
気づくタイミングが遅れると怖い。