ringo

劇場のringoのレビュー・感想・評価

劇場(2020年製作の映画)
4.3
「いつまでもつだろうか。
次に不安が押し寄せてくるのはいつだろうか。」

度々繰り返されるこのセリフには共感しかない。

いつからか、幸せなことがあると、ああこの幸せはいつまでもつかな、次はいつ悲しいことが起こるかな、って考えてしまう癖がついた。
幸せは長く続かないものだと諦めているから悲観的だけど、その代わり不幸も長くは続かないと思っているから楽観的でもある。

「もう東京だめかもしれない」
この言葉はとても切なかった。
沙希ちゃんと永くん、一緒にいるとどっちがまともでどっちが壊れているか、だんだんわからなくなる。そもそもまともって何だろう。

「感情に従順である人間を僕は恐怖の対象としてみていたが、そういう人間こそ尊いと思うようになった」
恋愛映画っぽいシーンは殆ど無いけど、お互いのことを好きで、必要としていて、良くも悪くも影響しあっているのはすごく伝わった。

自転車のシーン。
無言の沙希が最後の答えを口に出してしまうのが怖いのか、喋り続ける永田。
「神様、後ろに乗ってますかー?」
夜明けの薄明るい感じと、まだ肌寒い感じと、桜。
ものすごく、これは好きなシーン。

なんとなく、大学生の頃に感じた、自由かつ時間が有り余っているからこその孤独感とか、自分の生き方次第でどこまでも堕ちていきそうな感じを、思い出すシーンだった。

ラストシーンは私は泣いた。
台本を読み始める2人。部屋と劇場の演出。
“観念したように”笑う沙希。
エンドロール、劇場を後にする沙希、照明が消える最後まで、とても良かった。

音楽いいなぁと思ったら、曽我部恵一で納得。
あと、松岡茉優は改めてすごい。
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