riesz77

劇場のriesz77のネタバレレビュー・内容・結末

劇場(2020年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

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上映作品をコロナの影響なのか、まさかスマホで観れると思わなかったから、うれしかった。

友人からおもしろいと聞いていたけど、やはりおもしろかった。後半に進むにつれて入り込む。見入ってしまい、最後のシーンはすごくよかった。たまたま見つけた思い出の台本。読み合わせていくと、これまでの2人に重なっていき、それが演劇作品として移行していく。その演出が良かった。

永田と沙希、ふたりの関係性は、作品として残る。第三者の目に映ったとき、それは初めて作品として存在する。価値を持つ。本当に情けない永田と、夢より恋愛をとってしまう沙希の堕ちていく2人は見ていて何歩も引いてしまうような関係だけど、それが作品として、それもおもしろい作品として残るのなら、悪くないのかもしれない。どんなに無様でダサくても、一生懸命生きることで意味を持つ。そこにスポットライトを当てる又吉さんさすが。芸人の域を超えた本物の芥川賞作家なクオリティだった。行定監督の演出が良かったのかもしれないけど、主演の2人、脇を固める2人の芝居もとても良かった。

2人の出会い方がまず気持ち悪いし、すぐに恋に落ちて家に転がり込む永田を許してしまう沙希にも引いてしまうが、演劇にしがみついて生きる永田と、夢に敗れて恋愛に走る沙希の細かい設定や背景が気になった。そこがわかればもっと理解できるかもしれないし、逆に引いてしまうかもしれない。『劇場』はあくまで映像化されるためではなく、本。だから原作が気になった。

「おれ沙希ちゃんの母さん嫌いだわ」
このセリフがキツく、永田の人格がわかる一言だった。そこから光熱費の折半の話を訳の分からない理屈で折り、原付で延々と公園を回って怒らせる行動や、わざと話しかけないようにする態度も、とにかく永田の自惚れた様子を表してる。沙希の性格も永田のクズな人間性に拍車をかける。堕ちていく2人がダサい。

こんな負な関係でも、最後には希望が見えてくるから救われる。良かった。
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