日本社会は若さに異常に羨望の眼差しを向けますが、果たして「若いこと」は良いことなのでしょうか…。
才能のなさを認めてからがスタートなのに、それができない愚かさ。家でじっと思考だけを巡らせ、焦りだけはむくむくと肥大する。「あの頃」の本物の苦悩が描けていると思いました。
松岡茉優が演じた沙希が「私もう27歳だよ?まわりはみんな結婚して、こんな生活してるの私だけだよ」と言う場面は、世間が年齢に対して向ける厳しい目を彼女が内面化してしまったことの表れで、とても見ているのがツライ。
でも程度の差はあれど、これは多くの人に共通することだと思います。僕自身も20代後半に向かうにつれて薄れたものの今でも同じような思いに駆られることがあります。
一歩間違えばただのメンヘラ女と揶揄されそうなキャラクターをきちんと人間味溢れるものとして表現した松岡茉優の演技は素晴らしかったです。
ポン・ジュノが褒めていた原付で同じ場所をぐるぐると回るシーンも面白いですが、ラストシーンについて少し。
僕はあのラストの沙希の「ごめんね」というセリフに居た堪れなくなりました。あんなに純粋で真面目で誰も傷つけてない彼女に、そんなに全部背負わしてしまうのか…と。
彼の夢を応援したかった彼女にとって、切なくもハッピーなエンディングとして笑顔で終わることができたはずです。
それでもあの涙とごめんねを言わせるのは、男側から見たエゴのような気がしてなりません。
沙希はどうか幸せに…。そう願ってしまいました。