けーはち

ブラック校則のけーはちのレビュー・感想・評価

ブラック校則(2019年製作の映画)
3.9
ジャニーズアイドルの扮する高校生が抑圧的な学校に立ち向かう良くあるアイドル映画だが、主人公の闘う目的は「恋した女子の退学の撤回」で、様々な生徒や教師が連帯し生き生きと活躍する群像劇となる表現は、学校側の管理の限界も踏まえた上でカビの生えた安易なイデオロギー的な階級闘争よりよほどスマートに普遍的な自由への想いが言葉と感覚で繋がるよう洗練されている。

特に生徒の声なき声を表現する壁の落書きが日々変わるのが印象深く、また吃音の少年が外国人労働者からマイクを渡されラップを披露するシーンは泣けた。主人公はそういう洗練された表現を持たず、カッコ悪いけどそれもまた良いか。

対して、校長側の「立派な人間になれとは言わない。そういうのは家庭でやってくれ。我々は管理するだけだ」という主張もある程度は妥当。無闇に抑圧をかけたり対立しても仕方ない、目的決めて対話していこうぜ的な話ぶりに納得感。

本作のマドンナ、モトーラ世理奈はイタリア人とのハーフでモデル体型、長い茶髪なのだが、モンゴロイド系の厚ぼったい一重瞼に白人系の肌質、そばかすが目立つ面貌で、要は日本で男性にウケるツルツルキラキラ可愛い国民的美少女でなくガッツリ唯一無二な個性派。特別扱いされて当然の「別枠」の納得感ある素晴らしい人選。

また、かつては国民的美少女の側として、セーラー服で機関銃をブッ放していたりした薬師丸ひろ子が、掃除のおばちゃんとして意外なところでトリックスターのような役割を負って出てくるのもなかなかにハイコンテキストである。