タイトルはかつて存在した国家フナンから。
難しい歴史の話は出てこない。見れば大体の状況はわかるはず。焦点は家族の絆や集団心理などのほうに当てられている。
何度も心を壊され体が傷つき、それでも生き延びるという執念を試される。
つい数十年前の話。
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町は国の浄化をうたう武装勢力に制圧され、一家は農村に送られた。
その途中3才の息子とその祖母がはぐれてしまったが、組織は探すことを許さない。母も父も心はずたずた。
組織は社会主義をかかげ、個人資産の所有をゆるさない。
どしゃぶりのなか配られた少しの粥を食う日々。だが指導者たちはテントでじゅうぶんな食料を確保している。賄賂も受け取る。
着いたさきで労働に従事するが、そこに暮らす村民たちも歓迎はしていない。
疎開組のあいだでも亀裂が生じだす。目につくことをすると嫉妬の対象になり阻害されリンチにあう。自分や家族を守るため他人をだしにする。家族親戚間でも絆は失われていく。尊厳を切り売りしても生き残れるとは限らない。
息子は生き延びていた。
洗脳教育を受けさせられていたが、祖母のほうは連行されてしまった。
母はいつの日も息子を追い求め、父も辛抱強く機会を伺い、歳月は過ぎていった。
果たして親子の再会は。