シズヲ

ワイルド・ウエスト 復讐のバラードのシズヲのレビュー・感想・評価

3.5
オレはバカだからよく分かんねえけどよォ……ここ最近のマイナーな西部劇の邦題や国内版ジャケットってのは必要以上にB級アクション風味にし過ぎなんじゃあねえのか?(物事の真理を突く脳筋キャラ)

そんな訳でジャケ絵などは冴えないけど、蓋を開けてみたら意外と渋い西部劇。原題が“The Ballad of Lefty Brown”でこっちも渋い。さりげなく主演がビル・プルマンで、『インディペンデンス・デイ』のホイットモア大統領のイメージが強いせいでギャップがやたらと印象的。出番は短いもののピーター・フォンダが重要な人物として出演してるのも嬉しい。

「皆から慕われている牧場主の脇にくっついている愚鈍な老人」という主人公の造形が特徴的で、きつく訛った喋り方も相俟って“めっちゃ頼りなくなったウォルター・ブレナン”みたいな雰囲気がある。不器用かつ口下手で銃の腕前もイマイチ、若者達からは小馬鹿にされ、仲間内で一人だけ伝記に描かれてないなど、色んな意味で哀愁漂う。牧場主の奥さんから「あなたが死ねば良かったのに……」とディスられるのは流石に不憫だ。それでも旧友への義理と人情を直向きに貫こうとする主人公は憎めないし、ビル・プルマンの好演も相俟って味わいがある。偶々拾った少年との疑似家族めいた掛け合いも主人公の人柄が伝わってきて好き。

現代の西部劇ではよくあることだけど、全体的な映画のトーンを真面目にしているせいで筋書きの凡庸さや大雑把さが却って目立っているのは気になる。硬派な雰囲気の割に結構粗があるので引っ掛かってしまう。“本当の黒幕は権力者……”という紋切り型の展開や妙にこじんまりとしたシチュエーションなど、都合の良い脚本にも色々と思うところはある。音楽もまあ無難というか如何にも現代的にセンチメンタルであんまり好きではない。それでも主人公のユーモラスな哀愁や過去の友情の苦々しい行く末など、なかなかどうして憎めないものがある。

男4人の関係性や伝説性についてはもう少し掘り下げて欲しかった気持ちもあるけど、“伝説化されたガンマン達”の絆が利権を巡る時代の変化と共に崩壊していく構図には何とも言えぬ悲哀が滲み出ている。そうして最後は“語り継がれなかった男”だけが生き残り、彼もまた何処かへと去っていくという“挽歌”には趣がある。裁判無しの私刑から主人公を助けたと思ったら黒幕を裁判無しの私刑で裁いた奥さんはちょっと奇妙だが、黒幕自身が「自分はどっちにせよ連邦法違反で死罪になる」と語っていたので結果オーライみたいになってる感はある。
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