TaiRa

Mank/マンクのTaiRaのレビュー・感想・評価

Mank/マンク(2020年製作の映画)
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ハイコンテクスト過ぎて誰の為の映画なのか分からなくなってる。フィンチャーにしてみれば父親の為なんだろうけど。

『市民ケーン』の脚本を書いたマンキウィッツの伝記、なんて単純な映画ではもちろんない。ポーリン・ケイルの『スキャンダルの祝祭』をベースにしているが、だからと言ってそれに端を発した論争は重要ではない。劇中でも繰り返し言及される通り、映画とは常に虚構だ。デジタルシネマに存在し得ないチェンジマークが表示され続ける今作はその虚構性を常に意識させる。映画の本質が虚構なら、映画の時代たる20世紀は虚構の時代だった。その時代の象徴的存在が新聞王ウィリアム・ランドルフ・ハーストであり時代の寵児オーソン・ウェルズである。二人ともメディアにフェイクを持ち込んだ代表的な存在だ。マンクはなあなあに生きてるが嘘は付けない。彼はハースト王国のお抱え道化師だ。宮廷道化師とは王への批判を許された存在。誰も言えない真実を言ってしまうのが道化師だ。果たしてマンクにその役目は務まるのか。王に向かって真実を言えるのか。ハーストが王なら、もう一人の重要人物アプトン・シンクレアは『裸の王様』における子供の様な存在。彼の代表作は潜入調査によって食肉産業の不都合な真実を暴露した『ジャングル』だ。真実を暴き出す存在と虚構(フェイクニュース!)をバラまく王の間に立つ道化師が、人生掛けて捻り出した「真実」が『市民ケーン』という作品、って事なんじゃないかな。知らんけど。
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