YasujiOshiba

ザ・ハントのYasujiOshibaのレビュー・感想・評価

ザ・ハント(2020年製作の映画)
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ネトフリ。23-48。こいつはおすすめ。テンポより。血のソースがかかった風刺と笑いもよし。予想外の展開も楽しめるし、謎もある。しかもすっきりする。最後にはキャビアをディップしながら、シャンパンをビールみたいに流し込む気分になれる。いやほんとに。

おばか映画を見ようと持ってアクションを謳う邦画をクリックしたのだけれど、冒頭の数カットでストップ。好きな女優さんなのだけど、だからこそ、見てられない。このままでは寝られそうになかったので、気になっていたこれをクリック。いいじゃん。よかった。

「スノーボール」はG.オーウェルがレフ・トロツキーをモデルに想像したブタさんなのだけど、いなくなってもなお、残されたものに影響を与え続ける。『1984』のエマヌエル・ゴールドスタインと同じで理想社会における憎悪の対象、亡霊みたいなもの。この映画のテーマはそこなんだよね。PCやキャンセルカルチャーにおける「トロツキスト」であり、そのタームを利用するものへの寓意的な批判。

そんなブタさん呼ばわりされたベティ・ギルピンが最高にかっこいい。そのカッコよさを盛り上げてくれるのが『ミリオン・ダラー・ベイビー』のヒラリー・スワンクだからたまりません。やっぱり、女たちがガチに戦うのはかっこいい。いやほんと、彼女たちのホットとクールを、まわりがスマートにサポート。どこかの邦画のようにカット割りと音楽だけで「アクション」を謳うわけじゃないからホッとする。

オーウェルだけじゃなくてイソップもひねって引用。冒頭のジョークのカメとラストのウサギが対応しているわけなんだよね。カメが勝つとおもうでしょ。でも違うのよ。最後はウサギがカメを屠ってご馳走を全部食べちゃうのよ。そんなひねり。

それじゃウサギは誰なんだってことなのだけど、さしずめアフガニスタンの亡霊というところなんだろうな。口先だけでチャラチャラいいながら、じっさいの「ハント」を知らない輩たちの前に、生き地獄から舞い戻ってきた亡霊。依代となるのがベティ・ギルピン。彼女の名前は覚えておこう。
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