ジェイコブ

シャン・チー/テン・リングスの伝説のジェイコブのネタバレレビュー・内容・結末

3.9

このレビューはネタバレを含みます

何世紀にも渡り、世界の裏で暗躍し続けてきた犯罪組織「テン・リングス」。指導者のウェンウーはリングによって不老不死と神の如き力を手に入れたウェン・ウーは、さらなる力を求めて訪れた伝説の村「ター・ロー」で一人の女性と出会い、恋に落ちる。二人の間に生まれた男の子シャン・チーは、父から殺し屋として高度な戦闘武術を仕込まれるも、自らの運命に嫌気が差して逃げだしてしまう。過去を隠し、米国へ渡ったシャンは親友のケイティと共にホテルの駐車係として働き、目標はないものの楽しい日々を過ごしていた。ある日、二人でバスに乗っている最中、父の差し向けた刺客に狙われ、母の形見であるペンダントを奪われてしまう。刺客の一人が言った「お前も妹も自業自得だ」という言葉を聞いたシャンは、妹に危険を知らせるため、ケイティと共に彼女のいるマカオへ向かうのだが……。
マーベル・スタジオ制作の最新作。主要キャストのほとんどをアジア系の役者で固めたマーベル初の作品としても話題となった。そうした意味では、同スタジオ制作の「ブラックパンサー」に続く試みと言えるだろう。また、マーベル作品で中国系超人と言えば忘れてはいけないあの人ドクター・ストレンジのウォンも登場する。
ヒーロー×中国武術といえば、ドラゴンボールをまっさきに思い浮かべる人も多いだろう。本作にもカメハメ波を思わせるポーズや、龍に乗るシャンの姿など、所々孫悟空へのオマージュと思わせる姿が見られる。また、スター・ウォーズを彷彿させるような父と子の戦いからの力の伝承、リングを使ったド派手なバトルや意外なところで役に立つ駐車係のスキルなど、これぞハリウッドと言わんばかりに詰め込まれたアクションが見所。
本作は「ター・ロー」のモデルは中国の果てにあるとされる伝説上の国華胥(かしょ)ではないかと考察。そこは聖人君子の理想郷としても語られ、中国神話の王伏儀の母の故郷とされている。また伏儀には女媧という名の妹がいるとされており(一説では夫婦とも)、二人とも蛇の体に人の頭の姿で描かれていることから、シャン・チーとシャーリンのベースになったのではないかと考える。何より、本作に登場するシャンの母が語った「光と闇」相反する2つの力についての言及は、伏儀の作った「陰陽説」のメタファーにも取れる。その他にも、災から人々を守るとされる沖縄のシーサーに似た怪物(中国の石獅子が基)や、首里城に似たター・ローの建築物など、沖縄にゆかりのある人や旅行した事のある人であれば既視感を覚える部分もあるだろう。
ラストは次回作へ繋がる壮大な余韻を残したまま終わるかと思いきや、「いやお前も歌うんかい!」と思わず突っ込んでしまう、何だかジャッキー映画にも通じるほっこりした終わらせ方だったのがまた良い笑 話の細かい部分で説明不足な点がいくつか見られたが、久々に登場した肉体派の男性ヒーローが新鮮に思えたので、素直に楽しめた。