サマセット7

ソー:ラブ&サンダーのサマセット7のレビュー・感想・評価

ソー:ラブ&サンダー(2022年製作の映画)
3.9
MCU29作目の劇場作品。「マイティソー」シリーズ物4作品目。
監督・脚本は「マイティソー/バトルロイヤル」「ジョジョラビット」のタイカ・ワイティティ。
主演はシリーズ通じて「ラッシュ/プライドと友情」「タイラーレイク命の奪還」のクリス・ヘムズワース。

[あらすじ]
エンドゲームでのサノスとの決戦後、ガーディアンズの面々らやクロナン人のコーグ(ワイティティ)と宇宙に旅立った元アスガルドの王、雷神ソー(ヘムズワース)は、立ち寄り先の惑星で、呪いの剣を操るゴア(クリスチャン・ベイル)が、神々を次々と殺めている情報を知る。
ソーは、ゴアが次に狙う地球のニューアスガルドに急行するが、そこで、かつての恋人ジェーン・フォスター(ナタリー・ポートマン)と再会する。彼女は、ソーと同じ装束を纏い、かつての武器雷槌ムジョルニアを操っており…!???

[情報]
マーベルスタジオによる、超巨大プロジェクト、マーベル・シネマティックユニバースは、今作で29作目を数える。Disney+で公開中のドラマシリーズも合わせると、さらに作品数は増える。
マーベルコミックのヒーローたちを次々と登場させ、彼らを大集合させる、というアイデアは、アベンジャーズシリーズ4作品目のエンドゲームで結実した。
エンドゲーム後は、第一世代のアベンジャーズが一線を去り、第二世代のヒーローたちにバトンを渡す物語が中心となっているように見える。

そんな中、今作は、単独ヒーロー主演作としてはMCU中でも最多の4作目。シリーズ中でも「神」という独特な立ち位置の第一世代ヒーロー、雷神ソーのエンドゲーム後の冒険が描かれる。
予告段階から、「マイティソー」「マイティソー/ダークワールド」にヒロインとして活躍した、ナタリー・ポートマン演じる科学者ジェーン・フォスターが、9年ぶりに新たな「マイティ・ソー」として再登場するとあって、注目を集めた。

監督のタイカ・ワイティティは、前作「マイティソー/バトルロイヤル」から続投。
コメディアン出身監督らしい、全力でコメディに振り切った作風を、今作でも全開する。

敵役ゴアを「ダークナイト」3部作などのカメレオン俳優、クリスチャン・ベイルが演じる。
また、「グラディエーター」のラッセル・クロウが神々の王ゼウスを演じて強烈な印象を残す。

今作は、批評家からは賛否両論を受けている。
一般客層からは、今のところ、この手のコメディにしては好評のように見える。
現在公開5日目だが、初日成績は今年公開作中3位とのことで、興行的には悪くないスタートを切ったようだ。

[見どころ]
タイカ・ワイティティ節炸裂!!
振り切ったジョークとネタの嵐!!
サントラは、ガンズンローゼズ!!
基本は何も考えずに見られるバカ映画だが、驚きや感動も!
クリスチャン・ベイル!ナタリー・ポートマン!
名優たちによる、プロの仕事!!
無双系ゲームを彷彿とさせるアクションの連打!
ジェーンとソーの関係の行方は!!???

[感想]
とにかく、楽しい!!

MCUの作品は、DCの一連のアメコミ映画に比べて、はるかに陽気でキャッチーな作品が多い印象だが、今作はその中でも突き抜けている。
完全にテイストはおバカコメディであり、MCUファンからは、好みが分かれそうだ。
私は、やり過ぎだろうと思いつつ、何だかんだ楽しんだ。

何しろギャグやジョークが、連綿と続く。
私の近くで観ていた外国人の観客は爆笑していた。
特に、ムジョルニアとストームブレイカー(いずれもソーの武器)に関するネタは、お気に入りだ。

神々が出ている時点で何をか言わんやだが、MCUの中でも突出してリアリティラインが崩壊しており、宇宙空間や異世界間の移動、超能力の発動、武器の使用技術など、特段の説明や描写なく、あっさり飛躍したり習得したりする。
テンポが良い一方で、設定が心配になる。

クリス・ヘムズワースとナタリー・ポートマンは、さすが、しっかりと肉体を作り込んでいる。
ジェーンの変身後と変身前のギャップが凄い。

彼らとクリスチャン・ベイル、テッサ・トンプソンを加えたアクションは今作の目玉の一つ。
一対多数の戦闘が多く、CGを臆面もなく駆使したド派手バトルで、脳みそを空っぽにして楽しめる。

演技という意味では、やはりクリスチャン・ベイルが抜けている。
見事に独自の印象的なヴィランを演じていて、さすがである。
さすがといえば、ラッセル・クロウも詳細は触れないが、凄かった。

ストーリーとしては、ジェーンとソーの再会後のぎこちない関係と、2人の互いへの想いは感動的。
バカバカしい話がほとんどなので、不意打ちでロマンスが入るとギャップにより威力が高い。

色々と言いたいことが多くでてくる作品なのはたしかだ。正直、作品として、色々な意味で完成度が高いとは言えないように思う。
一つ挙げるなら、ソーが無敵すぎて全くハラハラしない、という問題は確実にあるだろう。
プロット先行で、キャラクターの変化や成長が描けていない、という批判もあり得るか。
とはいえ、そういったことも含めて、あとでワイワイ語り合い、ツッコミ合うのが楽しい作品でもあるかもしれない。

MCU恒例のエンドクレジット後のシーンも健在。
とはいえ、他作も風呂敷を広げる中、そろそろ、シリーズ全体がどこに進んでいるのやら、と思わないでもない。

[テーマ考]
メインの軸であるソーとジェーンとの関係や、タイトルから、今作のテーマは、「LOVE」であろう。
最終盤のシーンや展開は象徴的だ。
ヴィランのゴアもまた、裏返しにこのテーマを表現する存在である。
コーグやヴァルキュリーの細かいエピソードもこのテーマに沿って理解することができる…。

…何か薄ぼんやりとしてはいないか。

…そもそも、このレベルで複雑な設定が絡み、ジャンル性も極まった作品で、テーマとか言うのも無理がある。
大体、テーマは「LOVE」(ドヤ)って、ほとんどの映画作品がそれでまとめられるから!!!

とはいえ、ジェーンとの恋によって、王としての自覚に目覚める話であった第一作「マイティソー」から、順にソーの、王としての成長を描いてきたシリーズにあって、王からただの旅人になった今、ソーがついに見つけた、本当に大切なものとは何だったか。

それを考えると、LOVE、としか言いようがないのである。

[まとめ]
MCUの一翼を担ってきた雷神のその後を描く、振り切ったギャグとド派手なアクション満載の快作。

今作は、カメオ出演も楽しい。
マジかというレベルの俳優がどうでもいいシーンに出ていたりする。