よしまる

ソー:ラブ&サンダーのよしまるのレビュー・感想・評価

ソー:ラブ&サンダー(2022年製作の映画)
3.9
 「Drストレンジ2」を観た時に、「スパイダーマンNWH」でマーベルは自らのエンタメハードルを1段階上げてしまったなと感じていて、さらに「トップガンマーヴェリック」という化け物みたいなエンタメ映画が出てきたので、予告を観る限り、こりゃ相当苦戦しそうだなと謎の上から目線w

 そうは言っても、前作「バトルロイヤル」は最低な邦題wを除けば、タイカワイティティのユーモアとペーソスに溢れたスペオペの快作と思っていて、ガチャガチャした内容ながら最終的には新たなアスガルド復興に向けた輝かしい船出、パトリックドイルによるソーのテーマ曲が流れた時はほんとに感動したものだ。
 なにせ、その後のインフィニティウォーの冒頭での悲劇なんてまったく予想だにしていなかったのだから😭

 そして例のデブっちょソー、「ホワットイフ」でのナタリーポートマンの復帰を経て、「ラブ&サンダー」という真っ向勝負なタイトル、期待が高まるほどにズッコケも予想されるので不安を抱きながらの鑑賞となった。

 いきなりGOTGとの共闘、ここんところ新キャラ続きだったMCUなので、おお、帰ってきたぜ!という感慨はやはり隠せない。すっかり成長したグルートや、相変わらずソーを意識してカワイイピータークィル、ラベンシャーズもいるし、こうしてまた劇場で彼等に逢える喜びは想像以上だった。

 が、興奮もここまで。ジェーンの登場こそ盛り上がったものの、ラッセルクロウのくだりや、ようやくたどり着いてすぐ撤退とか、どうにもとっ散らかった内容でテンポが掴みにくかった。なんだか編集に苦労しているというか、盛り込みすぎというか。

 もっとももったいないなぁと思ったのはクリスチャンベイルだろう。本人と分からないのに、彼でしかないという圧倒的な演技力、存在感。それなのに、神に見捨てられた絶望感、挫折、苦しみがいまいち伝わってこないのは、なぜ娘を失うに至ったのかが描かれてないからだろうか。
 「神みな殺し」というミッションの動機や意味付けが弱く、力の源や敵の雑魚キャラが意味不明なので、アスガルドの子供たちの闘いも、命を賭して戦うジェーンも、いったい何とどうして戦ってるのか、心が震えるに至らなかった。

 「神」が主役であるからこそ、神の存在、あるいは不在について突っ込んだ話もできる素材。シリーズ当初の「神々しさ」はすっかり失われ、ソーのズッコケ珍道中の色合いが強くなってしまったのは惜しい。

 相変わらず楽しいんだけれど、痛快アクションならよほど既視感の無いシーンを構築しないと満足できないところに来てしまってるなと感じるし、お金をかけるだけでは済まされない事態なのでは?と無駄な心配までしてしまった。

 ところが、もうひとつのソーとジェーンの「ラブ&サンダー」という主題については、実はかなり心に刺さった。賛否分かれる本作だけれど、ふたりのロマンスに期待した方ならきっと楽しめることだろう。以下ネタバレにて。













 まず登場人物については、ダリル!ダーシー!まさかと思っていたので出てきた時はヒョー!って心で叫んだ。ワンショットやワンダビジョンを観てきた人へのご褒美で、必須な情報ではないし、これ誰?と逆に追うのもアリだ。ジェーンがムショルニアをベッドに寝かせているのも、ワンショットへのオマージュ、楽しいなぁ♪

 グランドマスターこそ絶対オマケで出てくると思ったのだけれど、なんでも撮影はしてるのにカットされたらしい。なんでだろ?

 で。

 病に侵されたジェーンと再会したソー。彼が誰かから聞いた(誰なんだ?伏線あった?)、「空っぽでいるよりも、最低なほうがマシ」というセリフがズドンと胸に突き刺さった。
 たぶん若い時って傷つけたり傷ついたりすることにはなんの恐れもなかった。でも大人になると、そのことの無意味さを知ってしまい、時には殻に閉じこもってしまう。けれど、自分を空っぽにしたところで何も満たされないし、誰も幸せにすることはできない。だから、たとえ最低と言われようとも、自分をしっかり持って、相手のことを見つめていようというソーの決心に、ただ泣けた。

 結果的にソーはジェーンを思うがあまり、彼女を残して戦いに赴く。だがこれもまた最低でいいという覚悟の表れと思うと責められない。
 それでも戦いに身を投じたジェーンの尊さもグッとくるし、このふたりの辿ってきた長い道のりを想うと、、、

 ポストクレジット、彼女はヴァルハラでヘイムダルと再会する。単に死後の世界をチラ見せした余興と捉えるのは性急だろう。果たしてどのような形でソーとジェーンの愛は成就されるのだろうか。ちっとも完結した感のない2人の関係に、やっぱり次作が気になってしまう。

 ゴアの娘を迎えたソー(実の娘と知ってビックリ❗️)が、空っぽで良しとせずにちゃんと空虚と向き合って足掻いて生きていく、愛と雷をぶちかます爽快な活劇をもう一度見てみたい。
 自分もそんなふうにラブ&サンダーを浴びて元気出さないとと思える、そんなMCUがダイスキだ。