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ソー:ラブ&サンダーのrensaurusのレビュー・感想・評価

ソー:ラブ&サンダー(2022年製作の映画)
3.8
思ったよりコメディで、思ったよりシリアスで、思ったよりGUNS N’ ROSES。

前作ラグナロクではLed ZeppelinのImmigrant Songが使われており、今作予告でSweet Child O’ Mineが使われていることからも、今作でもロックの名曲が使われるんだろうなぁとは思ったが、あんなにガンズごり推しだとは思ってもみなかった。最後にはDioのRainbow in the Darkも流しちゃうというロック脳っぷりで、HR/HMの再評価待った無し!というような勢いだった。何よりソーの最強バカ美男というキャラに、ロックが映える。

面食らう程のガンズ推しだったが、考えてみればアイアンマンもAC/DCを激推ししていたし、ヒーローの暗い側面を吹き飛ばすように出てきたこのMCUの世界観は、まさにハードロックだ。そういった意味で今作は、様々なジャンルやテーマに触手を伸ばし始めたMCUの、原点回帰的な作品であるとも言える。悪役が、『バットマン』で暗いヒーローを演じたクリスチャン・ベールという点も何やら意味ありげである。

さらに目を見張る点は、『ドクター・ストレンジ:マルチバースオブマッドネス』に続いて、監督色が出ている作品に仕上がっていることである。MCUでの前作はサム・ライミらしさを全開に取り入れることで、長く続くMCUシリーズの固定化を避けつつも、シリーズを損なうことなく可能性を大きく広げることに貢献するような映画だった。今作のタイカ・ワイティティは、前作ラグナロクでもそうではあったものの、コメディ色全開のポップな路線をしっかり継承し、ソーのコメディキャラを定着させることで、MCU内での路線分けを図っているように感じられる。中でも好きだったギャグは、冒頭でソーが無双した後、神殿が崩壊した時にソーが放った「What a classic Thor adventure! Hurrah!!!これぞソーの大冒険、おりゃ!」というおバカゼリフと、ソーの持ち武器であるストームブレーカーとのやりとり。バカ過ぎて笑える。

前半では確かなコメディっぷりはあったものの、後半になるにつれて、信仰、愛、人生選択などなど、不釣り合いなほどずっしりとしたテーマを扱ったのも事実である。信仰に報われず愛する娘を失ったゴア。科学を超越して神になりながらも最終的に愛のために死を選んだジェーン。力で悪役を殺すより愛する人を看取ることを選んだソー。重い。急に重い。

それでいてシングルファザーのドタバタコメディーが始まりそうなエンドも急で振り回される。

ともかく自分は、ソーが好きなキャラであることやロックが好きなこともあって嫌いになれない作品だった。
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