なお

ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバーのなおのネタバレレビュー・内容・結末

4.0

このレビューはネタバレを含みます

"受け継がれる魂"

MCUの記念すべき第30作目。

2020年に惜しまれつつこの世を去ったチャドウィック・ボーズマン---ティ・チャラ王亡き後のワカンダ王国、そして残された者たちの運命と選択が描かれる物語。

✏️アクション
単刀直入に行って、アクション面やCG映像のクオリティはこれまでのMCU作品と比べて飛び抜けてイイ、というわけではない。

唯一、劇中登場する水中にそびえる大都市・タロカン帝国の街並みや人びとの暮らしぶり、水中を猛々しく泳ぐ水棲動物たちの雄大な姿は映画館で見て損はない迫力を誇るが、
「なんかこれついさっき見たな… あ、アバター新作の予告映像だ…」
と本作の上映前に流れた『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』の予告映像に似た構図と世界観の影響で、純粋な気持ちで楽しむことができず。

とはいえこれらの評価はあくまで「MCUの中では」という枕詞がつくことをお忘れなく。
ふつうに見れば、アクションやCG映像はやはり並の映画作品のそれとは数段上のクオリティであることは間違いない。

✏️オーバーラップ
ファンに惜しまれつつも亡くなった名優---チャドウィック・ボーズマン。
そして、
国中の皆から信頼されつつも亡くなった王---ティ・チャラ。

もうそこには”いない”、架空の作品の登場キャラクターとそれを演じた俳優の姿をオーバーラップさせ、彼らの死を悼みながらも、次の道へと歩を進めていく。
劇中でシュリたちが抱いたものと同じ想いを追体験し、味わう。
これこそがこの映画の真髄であり、楽しみ方であると思った。

自分なんかはのっけから涙腺ユルユル。
おなじみのBGMと共にお届けされるMCUのオープニングムービーは彼の死を悼む特別版が挿入された。

ただ無音のままダイジェスト形式で流れる、彼のこれまでの活躍の姿。
その後に現れる「MARVEL」の文字。
本日自分が足を運んだ劇場は8割程度席が埋まっていたが、誰も何も物音を立てず、ただじっ…と彼の死を悼んでいた。と思う。

✏️What, if...?
ティ・チャラの妹・シュリの成長物語でもある本作。
偉大な兄だけでなく、ネイモアの急襲によりシュリは母である女王の命までも奪われる。
もし、兄がまだ生きていれば…?
もし、母の命が救えていれば…?
そんなことを思わず考えてしまいそうになるほど、この2人の死はまだまだ若い彼女に大きな喪失感を与えることになる。

それでも彼女は、友や仲間の声に耳を傾け、自問自答を繰り返し「2代目」ブラックパンサーとして君臨することを決意。
兄と比べて細身で全体的に華奢にも見える体躯であるが、戦闘能力は全く劣らない。

シュリが半ば無理やりに連れてきた新たな仲間、リリ・ウィリアムズ/アイアンハートも参戦。
既にアイアンハートが主役のドラマ作品も配信が決定しており、今後の新たな展開への布石となってくれそうな予感。

☑️まとめ
チャドウィック・ボーズマンの突然の逝去。
彼が亡くなった当時自分はまだMCUの世界に入門していなかったので知る由もなかったが、当時それを知ったファンやスタッフのインパクトはかなりのものだったに違いない。

「ブラックパンサー」という作品を語る上でどうしても出てきてしまう、「主演の死」という要素。

ではこれからそれをどうするのか、どうしていくのか、どうしたいのか…?
そんなスタッフの苦悩と努力の結果生み出された本作が、我々の気持ちにひとつ”区切り”をつけ、新たなスタートを切らせてくれたように思う。
そんな作品であった。

ワカンダよ、永遠なれ。

🎬2022年鑑賞数:108(48)
※カッコ内は劇場鑑賞数
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