継

ふたりの継のレビュー・感想・評価

ふたり(1972年製作の映画)
4.0
マラケシュからカサブランカへ向かう列車で再会したボナー(フォンダ)とディアドラ(ワグナー)。
アメリカへ帰国するふたりは、カサブランカからパリへ飛ぶ飛行機へ同乗、次第に惹かれ合ってゆくのだが
ボナーはそれを断ち切る様に、自身がベトナム戦争からの脱走兵で本国に送還される身である事を告白する。。。

'72年, アメリカ製. 監督は『ウエストサイド物語』『サウンドオブミュージック』のロバート・ワイズ。
マラケシュ、カサブランカ(いずれもモロッコ)、パリ、ニューヨーク、
『太陽がいっぱい』を撮ったカメラマン, アンリ・ドカエが全編ロケ撮影を敢行したラブ・ストーリーです。

くすんだ色味の画質 (リマスター&安価再発を希望!)で描かれる、結ばれない運命にありながら出逢ってしまった悲恋。
ワイズは、あの『サウンドオブミュージック』ですら迫り来るナチスの影を描いてましたが、本作でもベトナム戦争の影をボナーに背負わせて時代の空気を伝えようとしています。

戦争によって引き裂かれるという単純な話ではなく、ボナーの “逃げるのに疲れ果てて出頭する脱走兵” という込み入ったキャラ設定が、この頃のまだ若くナイーブなフォンダにピッタリ。
公開された '72年というのは反戦運動がピークな頃で、米軍が敗北~撤退を始める前年なんですね。
例えば、出頭せずにふたりで逃げてしまうエンディングにも持っていけたわけですけど、そうせずに悲恋に終わらせた結末に、ワイズが訴えたかったメッセージを感じます。

ほんの数日間の出来事。
互いに報われないと頭では分かっていても想いはもう止められなくて、少しずつ縮まってゆく距離に戸惑う... 、ふたりの何気ない気持ちの揺れがナチュラルに表現された作品。

仕事や家族、健康上の事情とか... 何かしら超えられない壁があって、互いを思うからこそ関係を終わりにする、、って事は案外あるわけですが、
本作のふたりは上述の通り極端な事情、加えてメロドラマ的に悲恋を煽る演出も思いの外されないので、今観るとこうした別れの「経験がある」方以外は没入感が弱いかもしれません。
ケンカ別れとは違い、好き同士で別れるには終わらす決断が必要で。
“嫌いになったフリ” をすれば相手が踏ん切りがつけやすいか?とか色々悩むけれど、いずれにせよポッカリ空いた喪失感とダメージはその後に長く長く、尾を引くもの... 今作のラストには、リアリティがありました。


西部劇しか観なかった父親が、柄にもなく持ってたソフト。
亡くなった今は自分が持ってるんですが、Amazon見るとなかなか稀少なソフトのようです。
家族でモロッコへ旅行した事があったからその思い出なのか、もしくはリンゼイ・ワグナー目当てだったのか(笑)今となっては判然としないんだけど、父親が撮った写真を見ると今作に映るモロッコの風景や独特な匂い、空気感が感じられてワグナー目当てじゃなかったんだなと、忖度して(笑)思うようにしてマス。
当時6歳だった自分は、劇中で映る広大な草原を「これ見たかも?」って感じる程度しか記憶がなくて😂、本当は独身の内に旅して記憶を遡(さかのぼ)りたかったんだけどそれも叶わず。Jr.が成長して記憶に残るくらいになったら嫁さんと3人で旅してみたいなと思ってます(^^)。
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