胸に突き刺さる作品でした。
ネットカフェで起きた乳児置き去り事件。
そこから七年後のそれぞれの「親」。
不妊治療を諦め、特別養子縁組を望む五月と優一の夫婦。
七年間、里子の豊和を育ててきた。
家族の絆を深め、本当の親子のよう。
実績を積み本物の息子として迎えられるはずだった。
しかし、豊和の本当の母親を知り、その身近過ぎる存在に驚愕する。
実母が豊和を手放さなければならなかった、悲惨な真実。
DVと自殺未遂、そして置き捨て事件。
「貧困と孤独の中にいる人は助けを求める術を知らない」
追い詰められた悲しい親子だった。
親権を主張し対立する二組の親。
「私がここを出る時は豊和と一緒。」
「みんな持っているじゃないですか、家族も家も仕事も仲間も。
私には何も無い。一度手放したら二度と抱きしめる事はできないんですか」
孤独な実母の叫び。
それならば、と優一が茜にしたとんでもない告白。
もうどうなってしまうのかと驚いたが、優一はこの人に惹かれていたのではないだろうか?
実はずっと前から。
私はそんなふうに感じた。
自分の生い立ちを知らず、何も気づかないまま、優しく胸に響く言葉を投げる豊和。
どちらの親も豊和を愛している。
一歩も引かない両者の気持ちは当然だろう。
ネットカフェで乳児と暮らす事なんて無理に決まっている。
赤ん坊の泣き声を疎まれ、身を小さくして震える姿がせつなかった。
私の行った上映回では、男性女性とも啜り泣く声が多く、感情移入してしまう作品だった。
重いテーマだが、嫌な気持ちにさせない作りになっている。
キャストが魅力的に映るよう重点を置いたと監督が語っており、それは大成功したと思う。
だから感情が入る。
夕日の後の空の映像が美しい。
音楽の少なさがこの作品をより引き立てている。
貫地谷しほりは凄い女優だと思った。
観て良かった