母親ってなんだっけ?
児童遺棄や特別養子縁組など社会問題をきちっと盛り込んだ作品と聞きかなり身構えて鑑賞。しかし深く刺さりながらもどんよりせず、観終わった後はなんだか清々しい気分にもなる不思議な作品でした
茜と五月、それぞれが豊和に向ける視線や愛情、相対する様子ってなんだか恋愛映画を観ているようなんですよね。豊和は大人に依存するようには感じられず、すごく自立した人物として描かれているように感じました。だから彼の2人の「母」への言動から目が離せないし、母たちもそれに突き動かされているように感じる(実際、あかねは「恋煩い」なんて表現も使っている)。
また豊和が自立してることで、行政側が口にする「豊和くんの幸せを一番に」というセリフの意味が強調されるんです。あれ、今の彼女たちの行動って誰のためにやってるんだっけ?という。
貫地谷しほりと山田真歩という2人の役者の演技は抜群に素晴らしく、所謂「ふつうの母親」ではないからこそ、豊和くんとの一瞬を大切にしようという思いが溢れるように伝わりました。ちなみに、私的貫地谷しほりさんの一番良かったシーンは海沿いにいるときに豊和に呼ばれて振り返るところ。山田真歩さんの一番良かったシーンは、遠足前の豊和を見つめるシーン。
これらの中心人物に混じって、演技未経験の島人たちが活きいきとやり取りする様子も良かった。島の空気ごとスクリーンに映すほどのリアリティを感じました。
加えて、遠景の美しさは言わずもがな。ロケ地の魅力もさることながら、撮影もすごい。人を映す時と同じような優しさを海にも向けているような
親になる資格ってなんなんでしょうか。今年「存在のない子供たち」を観てからずーっとそんなことを考えていたので、本作を観たときすごく観たいものをみたかったような気分になりました。