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夕陽のあとの海のレビュー・感想・評価

夕陽のあと(2019年製作の映画)
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2020/9/4夕方、仕事終わり、台風に備えてスーパーに寄る。入り口で手を消毒してると、首からエコバッグを下げた幼い女の子が入ってきて、わたしの持ってる消毒のスプレーを隣でじっと見ている。消毒を向けてみたあと、でも知らないひとに消毒されるの嫌かもしれないと思い引っ込めるわたし。さっと手を差し出して、さっと引っ込める女の子。もう一度差し出すと、その子ももう一度手を差し出す。子どもの手をよく見たのは久しぶりだった。小さいのに、大人よりも何でも掴めそうな、きれいで完璧なかたちの、可愛い手。大人がこの手を、もみじみたいだと言う気持ち、わたしも大人になって初めて知った。「どこに居ても、誰と居ても、幸せでいてくれたらそれでいい」と思えることを、もしかすると最上の愛と呼ぶのかもしれなくて、けれどそう上手くはいかない。わたしは、たとえ何年かけたところで愛猫をその命の尊さに見合うほど十分に愛せはしないだろうし、人付き合いもいつもいつも間違ってばかりだ。あとすこし、とすがるし、もういいよ、と放しもするし、でもそのタイミングは、終わったあと全部間違っていたように感じる。愛していればいるほど、正解の道は狭まる。でもこれ以上はないと思う愛情を置いたままでは、わたしたちは何に対してもきっと本気にはなれない。大人のその身勝手を、数々を、黙って許す子どもの存在は本当に凄いもので、くだらないわたしたちが「大人だから」「子どもだから」「人間だから」と言って隔てている壁は、こういうときほとんど意味も力も失っていることが、分かる。本作で一番好きだったのは、そういう、子どもの存在の強さだった。わたしたちが、本当に努力して学んで、賢くなって、そうして本気で誰かに伝える想いを、悠々とこえてしまえるのは、子どもやそばにいる動物の小さなからだにいっぱいに詰まった、そのいのちだけだと思った。

書いてて思い出したけど、厳島の銘菓、もみじ饅頭は、本当はもみじじゃなく子どもの手が由来なのだといつか聞いたことがある。ちなみにもみじ饅頭は吉川七浦堂のが一番好きです。
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