こんなパワーのある遺作を残す映画監督、他に誰がいるだろう。癌で体が蝕まれながら完成させた映画とは到底思えない。
この映画の前の「この空の花 長岡花火物語」「野のなななのか」「花筐」の戦争三部作の熱量も凄かったが、衰える事なくそのまま引き継がれたその熱量に圧倒される。戦争三部作同様、合成や画の質感、照明はとてもチープ、しかし画面から溢れ出る大林監督独特のイメージはデビュー前の8ミリ自主映画時代に還ったかのような自由さで観客に迫ってくる。
映画で伝えられる戦時下での不条理、人を愛する時間さえ与えられなかった人生。今を生きる人、全てが噛みしめるべき映画。