Nella

ハスラーズのNellaのネタバレレビュー・内容・結末

ハスラーズ(2019年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

見終わって夫が開口一番「何故女性は…儲けた金を貯めないで、すぐ何か買って散財してしまうのか…」と言ってて、どこを見てたのかと思って爆笑しました。もう一から説明するのはめんどかったので「接客業っていうのはね、もんのすごーーーくストレスが溜まるんだよ」と答えたらまあまあ納得していましたが。

この話、別に犯罪集団がたまたま全員女性だっただけで、男性が一人でもいればよくある話なんですわ。所謂ポン引きとか女衒と呼ばれる男ね。しかし男に仕切らせると最初は一人二人だったのが、しまいには「1日に20人の見知らぬ男とセックスしろ。しなければ仲間に折檻させる」とか言い出す。所謂搾取ね。
そんなに仕事してたらアソコが擦り切れちゃうわよ。冗談でなく、膣とか子宮とか、何かしらの婦人科系の病気にはなるわよ。だから女だけでハスリンして、セックスしなくても済むような金儲けのビジネスモデルを作ろうとしたんでしょ。しなくて済むなら誰も売春なんてしたくないんだよ。それにストリッパーとかホステスは建前上は酒と良い気分を売る職業で、車とかスマホとかを売るのと変わらないと私は思う。要するに営業、セールス、キャンペーンガールだよね。
しかしそこに違法な薬を使ってしまって、別の犯罪になっちゃったのが…結局、ポン引きとか女衒ってのは用心棒も兼ねてて、良い思いをしといて対価を払わない客に暴力で払わすことができるけど、女だけだとそうはいかないもんね。だから薬という暴力を頼ってしまった。
子供や生活のために女性が犯罪を犯す話って結構あるけど、最後は女性の善性(ってのも、母性と同じでどこからきてんのかよくわかんない発想だけど)によって結局やめるみたいなのが多い。
でもこの作品には、明日食べる物もなく必死で生きてる時に善性って何よ??みたいなアンチテーゼも感じられた。薬でぶっ倒れても、ハッと「子供のお迎え!」って目を覚ますのはお母さんだけでしょ。男は子供のお迎えなんて知ったこっちゃないもんな。それは母性などという女だけの本能なんかではなく、大人としての養育義務への責任感なんだよ。人ひとりの命がかかった、重い重い責任だよ。父親は出すだけ出してトンズラだから良いご身分だよね、何が共同親権だよ、権利を主張する前に大人としての義務を果たせよ。

閑話休題。

売春婦にしか見えない夜職の格好のまま、慌ててお迎えに行くシーンは泣きそうな気持ちが表れててつい泣いちゃった。
そうやって彼女たちは、日々必死に涙を堪えて生きているから、たまには豪華なブランド品を買い漁って自分の人生は惨めじゃないと、少しでもキラキラした豊かなものだと思いたいんだよ。実際は空虚だとしても。

可愛らしいコンスタンス・ウーちゃんと格好いいJlo姐さんのシスターフッドが良かったし、店にアッシャーが来て札をばら撒いていくシーンは象徴的だったな。だってその裏ではサブプライムローンの破綻によるリーマンショックが着々と進行してたんだからね。キラキラして豪華だけど空虚、そういう時代感も表現されてたと思う。


【以下は完全に蛇足で感想ではありません】

サブプライムローンの破綻とかリーマンショックというのは新自由経済主義の終焉、というか大失敗の象徴な訳だけど、2008年にそれが起こってアメリカでは、もう新自由主義はダメだね…ってなってるのに日本では未だに維◯の会とかが標榜してまして…こんな大失敗の経済政策及び思想を、なぜそんな堂々と標榜できるのか不思議だよ。知らないだろうと思ってさ、馬鹿にしてんのかな。恐らく、本来は与党が標榜したい所を維◯が裏から支えてるって感じね。汚れ仕事をやらせてる訳。与党は維◯に足向けて寝れないわね。
日本人は「働かざる者食うべからず」が大好きだが、この諺も元々、「怠け」に特化した者のことであり、病気や若年、老齢など「働く力がない」者のことではない。自己責任論は一見正論のように聞こえるが、社会に於いては弱者切り捨ての側面が強い。サブプライムローンは自己破産出来ないから自殺者が急増したんだけど、「騙されるような情弱なのが悪い」という社会になってしまう、それは強者による人間の選別であって、自然淘汰ではない。
そして今の日本で、その新自由主義的なものの対抗馬として共産党が台頭しつつあるのは興味深いと思う。寡聞にして共産党が未だ共産主義を標榜してるのか私は知らんのだけど、政党名変えてないからそうなんだろうね。旧ソ連とかキューバとか見てても社会主義や共産主義は、完全に実現不可能なイデオロギーであると、私は思うんだけど、他の野党がノンポリ気味だから(政党なのにノンポリとはこれ如何に)、相対的に共産党がめちゃくちゃまともに見えるという現象が起きている。やはり政治によって庶民の生活への締め付けが厳しくなりすぎると、揺り戻しで、厳しくない政治を求めるようになるというのは、世界的、歴史的に見ても当然あるんだよね。
どんな主義も原理主義はダメだよ、特に全体主義は、ズルする奴が現れて独裁が先鋭化する恐れがあるし、そこら辺が過去の共産主義の失敗でもある。
とは思うんだけど、「皆で幸せになろうよ」というユルふわ路線を貫けば、共産党が政権取れるかもしんないなー、と思います。
Nella

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