ワンコ

高津川のワンコのレビュー・感想・評価

高津川(2019年製作の映画)
3.5
【“おまえが楽しくなければ、神様も楽しくない”】

古来から多くの日本人は川と共に生きてきたのだと思う。

急峻な山岳地形、大量の降雨・降雪で、多くの川が谷を削り、川岸には平坦な土地も作り、川の合流地点は川が運んだ土砂で合流扇状地となり、海に向かう広い平坦な場所に至っては同様に運んだ大量の土砂が大きな扇状地の平野を作って、人はそこに定住したり、田畑として利用したのだ。

僕は、田舎の合流扇状地に広がった街で育った。
片方の川には昔は沈下橋がかかっていて、僕が生まれるより前は合流地点を起点によく川が溢れていたらしい。
今は上流に多目的ダムが出来て溢れることはなくなった。

そして、生まれたのは、下流にある、同様に合流扇状地にある街で、伝統工芸やお祭りなど比較的知られた場所だ。

この川も下流に行けば行くほど、当たり前だが流量が増え、何万年もかけて運んだ土砂が広い平野を作っている。

僕は、決してダムが悪いとは思わない。

僕の育った街では、水害はなくなったと思うし、水質改善で農業用水として利用しやすくなるだけじゃなく、川自体も日本で有数のキレイな川になって、子供の頃は、川で魚を手掴み出来るほどだった。

発電所も併設されているから、その税収も安定的に期待できる。

温暖化で災害が多くなっている現状を考えると治水とCO2を排出しないクリーンエネルギーの水力発電目的のダムがあるのは悪いことじゃないようにも思える。

別に、高津川にダムを作れと言っているのではない。
一番良くないのは偏見と、相互理解のない対立だ。

僕の育った街にダムは出来たが、僕の生まれた街は、その恩恵に預かっている。しかし、僕の生まれた街にあった伝統工芸やお祭りなどは、結局は廃れつつある。ダム問題で揉めたことなどないのにだ。

ダムと伝統は関係ないんじゃないのか。

それに、票集めが目的で、政治がハコモノを作っても、若者の流出は避けられない。申し訳ないが、映画に出てくる萩・岩見空港は、利用者が目標に達していない慢性赤字空港のはずだ。だから、養蜂なんて話まで出るのだ。

今、日本の半分以上の自治体が過疎になっているのだそうだ。

今、自分の田舎の人と話しても、もんくは言っても、ソリューションを考えようとしているようには思えない。だから、外から、ここで働いてみようなんて考えて移住してくる人も少ない。

若者が何か発言すれば、生意気みたいな感じもある。結局、若者は流出超過だ。

“おまえが楽しくなければ、神様も楽しくない”

今は、ほとんどの人が楽しくない。

今、大切なのは、神楽や批判や絶望より、因習や偏見から抜け出して考えようとする前向きな姿勢のような気がする。皆が前向きになれば、活気づいて、また、神楽も楽しくなるような気がする。

ごめんなさい。

それにしても、神楽を見ている戸田菜穂さん、きれいだった。
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