CHICORITA主任

アラビアンナイト 三千年の願いのCHICORITA主任のレビュー・感想・評価

4.0
マッドマックスシリーズで知られるミラー監督の新作は、物語論研究者の女性と「物語そのもの」である魔人の語りをメインとした寓話性の高い作品。

かつて物語はこの世の成り立ちを理解し、人と世界を接続する役割を担ったが、科学技術の発達でその役割は終わりを迎える。神々は去り、物語の主題は人間個人へと移っていく。変わらないのは物語が「真実」を含むものである点だ。メタファーや寓意に満ちた御伽噺にも、数多くの真実がある。
しかし現代では、物語の役割はさらに失われていき、さらには嘘(フェイク)と結びついて人々を誤った方向へ煽り立てさえする。真実としての物語は、今や瀕死なのだ…そんなメッセージが伝わってくるような映画でした。

映画大好き、物語大好き、物語こそ人生を豊かにするパートナーである。この映画はまるで自分個人に語りかけるようで、非常に突き刺さるものでした。

物語の役割は形を変え、しかしその大切さは決して変わらず大きいものです。物語を死なせてはならない。そんな製作者の叫びが感じられる一本。
ひとつのお伽話としても、十分楽しめる作品です。ぜひ誰かと一緒に観に行って、感じたことやあなた方自身の物語を語りあう、きっかけにしてもらいたい素敵な映画でした。
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