SQUR

アラビアンナイト 三千年の願いのSQURのレビュー・感想・評価

4.0
他者性についての話で、他者性の中でも、友人の気苦労や惚れた腫れたの話を聞いていろいろな人生があるんだなあ、と思うみたいな次元の他者性の話ではなく、こういう世界もありうる、といった現実世界とは全く異なる可能性の世界という意味での、"物語としての他者性"の映画だった。
端的に言うと、ファンタジーの世界に想いを馳せることの歓びの話。

特に映画の大部分を占める"物語るパート"は、これからどんな話が広がっていくのだろうと、純粋にワクワクした。ただし、このテーマを描くにはややスケールが小さいとでも言うか、もっとダラダラと長ったらしく話して欲しいといった感じがある。テーマや題材的にも似ている「アラビアの夜の種族」という小説があるが、ちょうどあんな感じでもっと冗長に。

ラストになんか説教臭い話をしてるぽいパートもあったがそれはよく理解できなかったのでとりあえずなかったものとするとして、この映画は結局、結婚して子供を育てて、的なよくある"普通の人生"とは違う、現実世界を生きながらにして物語に心を奪われ、物語だけを頼りに生きる人を描きたかったのだと、勝手に理解した。

映像的に良かったシーンも多く、大スケールの世界観を映像化しSF的魅力を湛えた『マッドマックスFR』とは対象的に、小規模な神秘を描いた純ファンタジー的魅力を感じる映像が主だった。特に、あの空を飛ぶ謎の手作り装置のシーンが素敵だ。
SQUR

SQUR