木蘭

ルイス・ウェイン 生涯愛した妻とネコの木蘭のレビュー・感想・評価

4.6
 美しくも混乱したルイス・ウェインの頭の中をのぞき込んでいる様な作品で、徹頭徹尾イギリスらしい映画だった。

 初めこそ軽いコメディタッチで、人生も笑いも幸と不幸が紙一重・・・という様相なのだが、史実通り彼の人生が暗転し錯乱ていくと、それはブラックな笑いに変わっていく。
 それでも美的センスとユーモアを忘れない姿勢は、大英帝国のジェントリーらしい作品。

 画面サイズがスタンダードで、初めはノスタルジックな印象を与える為かな・・・と思ったが、作り込まれた画面に、観ている内にのぞき穴で眺めるピープショーというかパノラマショーを眺めている感覚を起こさせた。
 邦題からは消えているが、「The Electrical Life of...」というタイトル通り、主人公が夢中になったのは絵と猫と、そして電気。電気は感情や物事を伝え、過去を未来に、未来を過去に飛ばす触媒になるのだと、19世紀的似非科学も交えながら、主人公は発明と特許の取得に夢中になって散財するわけだが・・・つまり僕らは、彼の夢が未来で具現化するテレビジョンを観ている仕掛けになっているのだろう。(彼自身はシネマトグラフは嫌いだったらしいが)。

 中産階級の跡取りが、十歳も上の使用人と結婚するのは当時では大変な事だったのだろうけど、変わり者であればある程、この人しか居ない!という出会いがあって、それは貴重で尊い事で・・・そういう切ないラブロマンスとしても、良い映画でしたよ。 
木蘭

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