Okabe

フェルショー家の長男のOkabeのレビュー・感想・評価

フェルショー家の長男(1963年製作の映画)
3.9
ベルモンド3部作の最後。メルヴィルは59年に『勝手にしやがれ』制作時にベルモンドと知り合い、61年1月から62年11月にかけて2年間で彼と仕事をしたことになる。唯一シネスコ(フランスコープ)で撮られ、車外のNYの街並みが映える。冒頭のガチボクシングで実際にK.O.されたベルモンドの雄雄しさに、フェルショー=シャルル・ヴァネルが魅了されてゆく同性愛的でナルシズミックな様を殆ど台詞に頼らず見せてく手腕はさすが。私が投影されてる、とメルヴィルの豪語するベルモンドには確かにメルヴィル・ヒーロー的な趣があるが、ヴァネルにも『賭博師ボブ』にある様なメルヴィルの懐古趣味的な欲望が反映されてる。目立つのはやっぱり小道具、特に鏡とメタモルフォーゼ(流血→帽子→ネクタイ)するベルモンドの赤。珍しく女性との描写が多いが、逆にそこから男社会、というか内的世界(ラストショットでベルモンドが刺されたヴァネルを抱きかかえる所はちょっとナルキッソスぽい)に逃避してるのがよく分かる。実際メルヴィルの人嫌いは有名で、妻と猫3匹と「5人一組」で暮らしてたそう。

あとアメリカ版のDVDは字幕のタイミングがズレてて凄く見づらい。何か最後の方ベルモンドと女性の会話でチネチッタ!って言ってたけど仏伊制作だから?
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