富田健裕

hisの富田健裕のレビュー・感想・評価

his(2020年製作の映画)
4.7
子供だよ。

全ての決定権は子供にあるんだよ。
大人の事情と言うのなら、子供の感情はどうなる、愛情はどうなる。
同性愛者だから何なんだ?
仕事が忙しいから何なんだ?
相手の素性がなんだ?
知らなかったことを知ったから何なんだ?

400キロ弱の距離感を行ったり来たりさせながらも尚あれだけ無邪気に手を振る事が出来る本当の理由に気付いて頂きたい。



人間って誰しもどこかにマイノリティな部分を持っていると思うのです。
性的趣向だけに関わらず、いわゆる一般的には普通に出来て当たり前とされている事が出来ない、そして、それだけは誰にも知られたくない!という主観的な弱点。
その要素は個人によって違うのだけど、その要素を持っているが故に抱える感情は誰しもが共有出来得る訳で、それなのに人はいつまでたっても普通だとか常識だとか手っ取り早い物差しを引張り出してきてしまう。

普通とか常識とかはもちろん自分達が生活をしていく上で大切なモノで、それはどちらかと言えば心を持つ人間が現状を鑑みた時に最良の選択を取れる様になる為に存在するものであって、何か面倒な出来事を丸く収める為にあるものではないのだと思うのです。

利用し、活用すべきモノに自分達が振り回されてしまっては既存の概念にすら疑いの目を持たなければならなくなる。そうなるとどんどん人の心がなくなっていく。

離婚調停でどちらが親権を持つのが普通なのかって、いやいや、そもそも離婚すること自体がなかなか普通の出来事ではないですよ。

親権は奪い合うものではないですよ。
明け渡すものでもないですよ。
共有するべきものなんですよ。

お願いですから、あの子を独りにしないであげて下さい。
彼女は逞しい。それは確かにご両親からの善なる恩恵でしょう。
だからこそ、守ってあげてほしいものです。
富田健裕

富田健裕