"小世界" (2018)
寺山 修司氏「あなたは.....」
映画はそのオマージュから始まる
冒頭のインタビューシーンには
>月にどのくらいお金があったら足りると思いますか
>何歳まで生きたいですか
複数ある質問項目の中でも
寺山氏が考案した質問と同じであり
普遍的な質問であることが分かる(参照元がURL不具合により、サイト掲載断念)
平成が終わる間際に作られた作品であり
過去と現代の変遷していく部分を
人々がどのように捉えているのかという
「試み」あるいは「実験性」
に芸術性を感じた映画だった
自由を謳っているはずなのに不自由だったり
どこか生きづらい空気が蔓延していたり
はたまた目的がなかったり
一方で
人間が根底部分でまったく
コントロールできてないような
原子力発電の稼働に対して
首相官邸の近辺で抗議する団体の傍から
行き交う人々に街頭インタビューを
その場で敢行しようとする試みには
ある意味でアナーキーな同調メッセージが
あると強く感じてしまった
先の "三つの朝"/18 もしかりだが
『日常の中にある幸せは本当に小さい』
ということをやはり考えさせられてしまう
時季が変わっていくように景色も変わる
スクリーンに映し出される中央線に乗って
観客達はどこかに連れて行ってもらえる
望まぬ妊娠をした女性は揺れ動いていた
生きる目的を持たない映像作家との邂逅は
また違う風景とステップを見せてくれたのではないか
ラストに響く赤ん坊の泣き声は誕生や出発を
祝うアンセムのようにも聞こえてしまう
かつて寺山 修司氏が唱えていた
"半世界"
という概念
インタビュー中の人が見せる揺さぶられた
その "表情" こそが
存在感を際立たせリアルを感じさせるという
インタビュアーが半分/受け手が半分
相互作用によって "世界" が完成される
その概念とは異なるであろうが
小世界は
>自殺に失敗した女子高生と彼女を助けようとして命を落としたフリーターの男性
>雨の中で通行人に問いかけるインタビュアーの女性
>望まぬ妊娠をした女性と生きる目的を失った映像作家の男
3者が織り成す ささやかで小さな世界に
それぞれが補完しあった結果として
一つの世界を作り上げるパズルのピースの
ような日常風景を垣間見れる
存在が実存なのだと考えさせられてしまう
観客1人に対して向けられるメッセージは
まぎれもない "あなた" へのメッセージである
ということを感じさせてくれた映画だった