ポリティカルサスペンスの皮を被ったアウトレイジ。
実際に起こった大統領暗殺事件を元に、なぜ大統領の忠実な部下であったイ・ビョンホン演じる諜報機関のトップがなぜ暗殺に踏み切ったかを描く映画です。
事の発端である、大統領を告発しようとした人物を殺すまではしっかりポリティカルサスペンスしていますが、主人公の周りがヤクザの世界過ぎて、そちらの方が印象に残りました。
会議で怒鳴り合うのは当たり前、いがみ合っている者が顔を合わせた時はチャカを突き付け合うという、とても国の偉い人が大統領府でやることではないので、ヤクザ映画を観ているのかと思いました。そりゃアメリカ大使も呆れるわ。
主人公は大統領を思っての行動が元で疎んじられるようになったので、ガバガバな計画を元に暗殺を実行する訳ですが、この一連の流れが暴君と化した大統領を殺した英雄ではなく、結局は裏切られたから逆恨みで殺したという扱いなのが良かったです。
撃つ前に尤もらしいことを一席ぶちますが、酔った勢いで言っただけにしか見えず、酔いのせいか銃の弾詰まりも直せずに血だまりで転ぶという、緊張感はあるものの何とも締まらない山場です。でも、ここが一番良かったです。
そもそも、主人公もかつての友人を大統領の歓心を買うために暗殺して粉砕機に入れる様に指示する悪人なので、大統領は言わずもながなので、全員悪人な話なので、このグダグダ感がこの映画の主題を物語っていたと思いました。
良くなかったのが、当時の韓国の情勢を知っていないとよくわからない描写が多かったことです。
アメリカで出されるはずだった大統領の告発記事が盗まれて、日本の雑誌に唐突にリークされたり、デモが収束しないので揉めたりといったところが気になりました。
特にデモに関しては、何に対して市民が怒っているのか、どれくらいの規模のデモなのかが分かりにくかったです。せめて、当時のニュース映像とか使って、そこはわかるようにしてほしかったです。
上質なポリティカルサスペンスとアウトレイジなヤクザ映画が楽しめる、一粒で二度おいしい映画でした。
以下、雑感です。
・大統領の腰巾着のクァク警護部長が、この映画のヤクザ映画感の8割を
担っています。こいつだけやることなすこと全部チンピラ過ぎてお笑い
担当かと思いました。
最後もお約束通り、無様に死んでざまぁwでした。
・シーバスリーガルを韓国でお馴染みのお酒入れるヤカンみたいなのに
氷と一緒に入れて飲んでいましたが、あれは韓国で普通の飲み方
なんでしょうか。
氷で薄くなって、不味くなりそうなのでウィスキー好きとしては、
納得いかない飲み方でした。
・主人公が、犯行前にロックグラスに並々注いだ前述の酒を一気飲みして
一席ぶちますが、お酒強すぎる・・自分だったら何か話そうにも、
呂律回らない状態で話して、怪訝な顔されたところで撃つことに
なりそうだと思いました。
・大統領を悪辣に描いていましたが、よくこんな独裁者の娘が
後に大統領になれたな・・韓国での朴大統領の評価が気になりました。
・イ・ビョンホンの最近のイメージは、GIジョーとかで
意味もなく脱いでシックスパック見せているイメージでしたが、
演技派に戻ったんですね。
・独裁はやっぱクソっすね。忌憚のない意見てやつっす。
戻ったんですね。