ボブおじさん

KCIA 南山の部長たちのボブおじさんのレビュー・感想・評価

KCIA 南山の部長たち(2018年製作の映画)
4.1
事の良し悪しは別として、政権が硬直化している日本と違い、韓国は政治絡みの近代史を題材に映画化した傑作が多く、本作も間違いなくその中の1本に数えることができるだろう。

1979年に韓国の朴正煕大統領が中央情報部部長キム・ジェギュに暗殺された実話を基に作られた実録映画。従って韓国では結果は誰もが知っている。この映画は〝なぜ大統領は暗殺されたのか?〟について憶測も交えて描かれたポリティカル・サスペンスとなっている。

大統領暗殺という国家レベルの事件を描いているが、映画の中から見えてくるのは、ごく親しい仲間うちでの愛憎劇だ。しかもその愛憎の中に女は一切登場しない。これは徹頭徹尾、男しか出てこない世界の中で1人の男の心情の変化を描いた映画なのだ😅

当時の韓国の政治的背景について多少の知識はあった方がいいが、詳しい事は知らなくても、キム部長がアメリカと韓国政府の板挟みの中、民主主義に対する大義やプライドの損壊などが積み重なり、如何にして大統領暗殺に至ったかが理解できる作りとなっている。

同じ釜の飯を食って育ち、共にクーデターをも経験した大統領とその大統領直属の諜報機関である中央情報部(通称KCIA)部長の間には、かつては固い絆があった。

だが、のし上がってきた無礼な態度を繰り返す後輩の警護室長を大統領が一方的に庇護することにキム部長の憎悪が爆発した。この辺りの描写は、1人の男(大統領)からの寵愛をめぐる三角関係のようにさえ見えてくる。

もちろん本当の理由は、本人にしかわからないのだが、大統領の為に、自分の友人でさえ手に掛けてきたというのに許せない💢という気持ちは単純に〝男の嫉妬〟だけでは片付けられない。

愛国心と野心との間で揺れ動くキム部長をイ・ビョンホンが熱演してるが、それ以上に大統領を演じたカメレオン俳優イ・ソンミンと元KCIA部長を演じた韓国の六角精児ことクァク・ドウォンが素晴らしい😊


公開時に劇場で鑑賞した映画を動画配信にて再視聴。



〈余談ですが〉
それにしても日本で政治絡みの近現代史が映画にならない、あるいはヒットしない理由は何だろう?

アメリカでも韓国でも実話を基にしたポリティカル・フィクションの傑作は数多く作られているのに日本ではほとんど作られていない。

完全なフィクションは、それなりにあるのだか、歴代の首相や政治家をモデルにした映画となると平成以降極端に少なくなる。

それなりに面白そうなネタはあるのだが、作り手の問題か?観る側の問題か?