ケンタロー

シン・ウルトラマンのケンタローのレビュー・感想・評価

シン・ウルトラマン(2022年製作の映画)
3.5
「好きこそものの上手なれ」私の好きな言葉です。

庵野さんと樋口さん、二人のウルトラマンへの愛に満ち満ちた作品✨ 

好きが過ぎるのか庵野さん的に欠かせなかったであろう原作エピソードがギュウギュウ詰めだ😂『シン・ゴジラ』とは異なるアプローチでの演出となったことが、イマイチ観客がのめり込むのを躊躇させており、纏まりに欠けるというのではなく、一本の映画作品としての剛性が弱いのがちょっと惜しいなぁ…。

しかししかし、それはさておき
ウルトラマンは美しい✨

はじめて降臨したその立ち姿、弥勒菩薩像のようなアルカイックスマイルと全てを見透かすかのような瞳の無い大きな目、まるでリュウグウノツカイや太刀魚のような生き物としての生臭さを感じる銀色のボディ…。今回、庵野さんが敢えてカラータイマーを排し、成田亨氏の初期デザインに還したことの意味がわかったように思えた。一切の無駄を排したデザインの美しさとウルトラマンの完全生命体としての存在感が際立っている。

劇中でも語られるように神様、仏様、ウルトラマン様と、まるで神か仏かのように信仰の対象や拠り所となるに相応しい御姿と佇まい、闘い方なのだ。電流を真正面に受け止めつつ、拳一発で撲殺とかイイねー (;゚∀゚)=3

もはや宗教法人・光の国(本当にありそう…笑)、御祭神ウルトラマンってな具合である😂

そんな拠り所としてのヒーロー像を描きつつも、テレビ原作のエピソードどおり、悪質外星人の陰謀に巻き込まれていく様を重要エピソードとして、ある意味忠実にトレースしてくる庵野脚本なのだが、それはすなわち1966年のテレビ放映時の言わば「戦後」と「現代」の日本の抱える本質的な問題や不安は何ら解消されることなく、この国に内包されたままなのだということを再認識させられた。

アメリカの傘の下で属国と揶揄され続け、またそのことに慣れ、依存してきた現状。本作はコロナパンデミックの影響を受けなければ本来は少なくとも1年は公開が早かったハズだが、時代が追いつき、抜き去ってしまうかのように起きたロシアによるウクライナへの武力侵攻は、ガラガラと世界平和と安全保障を崩壊させてしまった。

世界の警察として日本のために戦ってくれる強いアメリカはウルトラマンと同様に幻想に過ぎないのだという事実。ロシア、中国、北朝鮮、外星人よりも厄介な隣国ばかりの現代…(^_^;)

1966年当時とは異なるのが情報戦の凄まじさだが、これらは劇中のザラブ星人やメフィラス星人の暗躍に象徴されている。ところで、山本耕史のメフィラス星人は素晴らしいの一言に尽きる。あんなに慇懃無礼で胡散臭いハマり役無いんじゃないかな😂

ホント皮肉だなと感じるのは、このような日本と世界が抱える諸問題が本作で訴えられるよりも前に、現実に、想像だにしなかった大規模な侵略戦争が起きてしまったことだ。現実が虚構を超えてくるってのが痛感させられた…。

で、現実(ニッポン)対 虚構(ゴジラ)をキャッチコピーに掲げたのが『シン・ゴジラ』。

虚構としつつも役者に演技的な自由を与えないような長ゼリフやカット割りで、さながらドキュメンタリーのような現実っぽさで平成ゴジラのようなエンタメ感から原点であるポリティカル・モンスターパニック映画へと再構築したのが大いにウケた訳だけど、『シン・ウルトラマン』にも同様の路線を期待してただけに、ちょっと肩透かしを食らった気がしたのは否めない…(^_^;)

スクラップ&ビルドと気に入った演出は飽きるまでやり続ける庵野さんらしさは健在だが、『シン・ウルトラマン』においては政府や禍特隊、各キャラクターの行動・言動共に至ってライトでご都合良い感じだし、あれだけ演技を排していたシンゴジに比べると、かなり演技的な自由を与えている。しかもそれがかなりアニメっぽい演技なのだ。ま、監督が樋口さんなので違って当然とも思うけれど、明らかにシンゴジとはテイストを変えているのが印象的だ。ただ考え方によっては庵野&樋口さんとしてはシンゴジとの差別化をハッキリとさせ、シンゴジのイメージをスクラップさせるという意味合いが強いのかもしれない。それでこその【 “ 空想 ” 特撮映画】なのだろう。

とはいえ、やたらにアニメ調な台詞回しと長澤まさみの気合のケツ叩きのアップはアニメ演出をまんま実写でやったらアカン!っていうお手本のようだ。

こればかりは中高年ヲタクのオッサンの悪いトコが凝縮されてるように感じた…。シン・仮面ライダー、大丈夫かな…(;´Д`)

ウルトラマンという作品のエッセンスを損なうことなく当時のクリエイターと同じか、それ以上の熱量と崇敬の心で再構築されたニッポンの誇るヒーロー映画であると同時に庵野&樋口さんの悪いトコもよーく出ているのがホント残念😂

※ 以下、ちょっとネタバレ ※

名前の無い政府の男として竹野内豊が登場したのが嬉しいサプライズだった♪ アレはまんま『シン・ゴジラ』の赤坂補佐官であったが、敢えて名前を出さないあたりが心憎い。どうやら、これはかつての『ゴジラ』『ウルトラマン』シリーズなどで見られた同一キャストによる別キャラ配役の継承をそのまんま模倣しているらしい。平田昭彦さんとか毒蝮三太夫さんなどなど。あと『仮面ライダー』シリーズでは小林昭ニがシリーズ通して立花藤兵衛/おやっさんを演じている。

『シン・エヴァンゲリオン』でも庵野演出は徹底的にこだわり抜かれた構図や劇伴、そして、まるで儀式めいた作法や手順が特徴的だったけど、まさかまさか、特撮シリーズあるあるとか、特撮業界の慣例までをも再現して作品に注入してくるあたり、さすが狂ってるな!と驚かされたのでした。

18 MAY22
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