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シン・ウルトラマンのSSSのレビュー・感想・評価

シン・ウルトラマン(2022年製作の映画)
3.2
 『シン・ゴジラ』の製作スタッフや監督は樋口真嗣、製作に庵野秀明を据えてがウルトマンの世界をリブート。

良かった点
・シンゴジラの精神的続編であり、もはや古典であるウルトラマンの再解釈
シンゴジラを観た当初、続編は作られないと思うけどあの世界観のその後を観てみたいという気持ちを抱いていた。それをシン・ウルトラといっていいようなゴメス(実質シンゴジラ)から始まり、日本に巨大不明生物(=禍威獣)が次々出現し、その災厄ぶりを紹介してくれ世界観の理解に繋がっていた。その中で出現したウルトラマンという禍威獣とは別の存在が如何に異質であるかを想像させるのは、かつてリアルタイムでオリジナル版を観た子供たちが抱いた感覚を蘇らせようとする試みなのであろう。

・山本耕史演じるメフィラス
何から何まで胡散臭い+地球への馴染み振りが伝わってくるという意味でキャラクターや演技とも文句のつけようのなかった。本作一番のオススメポイントといっても過言ではない。


賛否両論点
・超高速な連続カット
冒頭の“シンウルトラQ”は超高速連続カットに加えて字幕まで表示されて説明されるのは流石に駆け足が過ぎており、“繰り返し観るマニア向け”需要を満たすためとしか感じなかった。もう少しだけカットの速度を緩める、または字幕表示をしないなどをした方が映画として良かったと思う。一方で紹介された禍威獣全てが魅力的だったのでシンウルトラQとして1話30分で各エピソードを描いて欲しいと思った。


悪かった点
・長澤まさみ演じる浅見弘子の描かれ方
全体的にアニメに出てくるヒロインのようで演出もアニメ絵で見れば違和感を抱かなかったのかもしれないが実写で見るとダサいとしかいいようがない。お尻を叩くカットなどのダサさは勿論のこと、神永との群れの議論もアニメであれば成立しても実写映画ではあまりの説明セリフ振りに脚本演出含めてもう少し上手くできなかったのか?と思いながら鑑賞していた。


・予算不足であることが伝わる後半の戦闘
全体的にCGの質感が安っぽく、序盤は山や街中の実写映像の中に異質な質感こそが人類からみた禍威獣やウルトラマンへの違和感として受け入れる余地はあった。しかしメフィラス戦ではCGで描かれたコンビナート地域でCGで描かれたウルトラマンとメフィラスとの戦闘が出来の悪いCGアニメを観ているようで映画のトーンそのものから浮いてしまっていた。またゼットン戦も同様でこれらの違和感がなければ作中の展開に没入できていたのに勿体ないと感じた。

・IMAXでの公開
公開直後から、TOHO系列シアターのIMAXをハイジャックし大々的に公開した本作。前述の通り、予算不足でチープな画面が多かったので明らかに解像度的な意味合いで大画面負けしているシーン(スマホ撮影ショットが顕著)が多々あるにも関わらず、追加料金をせしめてまでIMAX公開をした商法が気に食わない。そこまでやるならそれなりに相応しい予算をつけるべきでは? 

総評
連続ドラマを2時間の映画に再解釈するという意味では非常に上手く纏まっており、映画としても楽しめた。一方で、明らかな予算不足を映像・展開の面で非常に感じる作品であり、『シン・ゴジラ』の二匹目のドジョウを狙い、かつ国民的ヒーローでありアジアを含めた世界興行収入や玩具など副収入も見込めるウルトラマンという巨大コンテンツなのだから少なくとも2〜3倍規模の予算でも良かったのではないかと思う。仮に潤沢な予算があった場合、個人的に一番好きな要素である山本メフィラスは観られなかったかもしれないことを考えると複雑な気持ちではあるが…。
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